ID 6617
登録日 2008年 3月 7日
タイトル
暖かな破局:第3部・削減を阻むもの/3 CO2吸収、間伐遅れが障害
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新聞名
毎日jp
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元URL.
http://mainichi.jp/select/science/news/20080306ddm002040014000c.html
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元urltop:
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写真:
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◇森林依存、計画倒れ
日本は京都議定書の削減目標6%のうち3・8%分を森林の二酸化炭素(CO2)吸収で賄う計画だ。実現には森の手入れが不可欠だが、林業の衰退で達成は難しい。
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四国山地の中央にある高知県大豊町。町の9割を森林が占める。町のシンボルもスギで、樹齢3000年の「杉の大スギ」は、国の特別天然記念物に指定されている。
先月17日、林業家などから間伐を請け負う第三セクター「とされいほく」の半田州甫(くにお)・副社長(65)の案内で、スギの植林地に入った。間伐されていない森は荒れていた。幹がモヤシのように細く、積雪の重みで
、何本も折れている。皆伐後に植林せず、裸地同然に放棄されたところさえあった。半田さんは「手入れを怠らなければ、樹木は太く真っすぐ伸びるのに」と表情を曇らせた。
60年代にはスギを1立方メートル売れば、伐採業者を10人は雇えた。今は安価な輸入材との競争などで経営は厳しく、一人も雇えない。林業従事者は、90年の11万人から、05年は5万人に減った。
国内の森林約2500万ヘクタールのうち約530万ヘクタールで間伐が必要とされる。間伐されない森は「緑の砂漠」だ。細い木が密集して薄暗くなり、生物も生息しにくくなる。
宮林茂幸・東京農大教授(森林政策学)は「日本の森は適切に切られずに荒れた。担い手育成などが課題だ」と語る。
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京都議定書では、植林や間伐で森を育てたことによるCO2吸収を削減目標に算入できる。日本は01年の国際交渉で1300万トン(炭素換算)を獲得した。省エネが進んで削減が難しいための特例で、森林面積が10
倍以上のカナダ並みだ。
しかし、間伐の遅れで05年の吸収量は目標の7割の970万トンにとどまっている。林野庁によると、ここ数年、年間35万ヘクタール規模の間伐が進むが、目標達成には、さらに年20万ヘクタールの上乗せが必要だ。
政府は年間数百億円を投じ、民有林の間伐費を半額補助している。03年度から森林作業の研修費などを補助する担い手対策に着手、約6100人が新たに就業した。
しかし、ある森林組合長(67)は「間伐前に行う森林所有者の境界確認だけで2年かかる。金だけでは解決しない」と指摘する。半田さんも「間伐材を運び出す際に傷をつければ、商品価値は落ちる。高い技術が必要で
、人材育成には時間がかかる」と訴える。
林野庁も、目標達成が難しいことは承知だ。
「日本の排出削減は森林依存度が高い。労働力確保などに努めるが、企業や家庭も削減に努めてほしい」。今年1月、温暖化と森林をテーマに東京都内で開かれたシンポジウム。「3・8%の目標は守れるか」との問いに
、沼田正俊・林野庁計画課長は言葉を濁した。
光明もある。国産材の需要がやや回復し、05年の木材自給率は7年ぶりに2割を超した。経済成長著しい中国なども買い付けるようになって輸入材価格が高騰、国産材に目が向くようになった。
半田さんは言う。
「木は数十年かけて成長する。政策を誤ると取り返しがつかない。今こそ、政府も我々も100年先を見越した森づくりに取り組む必要がある」【温暖化問題取材班】=つづく
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