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倍 虫害じわり東へ
新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20071022/CK2007102202058325.html
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元urltop:
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写真:
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生態系に影響 有効な防除法見つからず
県内で「カシノナガキクイムシ」によりミズナラやコナラが枯れる被害が急増している。被害量は昨年に比べ四倍に増えた上、これまで被害の中心だった県西部から県東部へと拡大している。直ちに土砂崩れなどの被
害に結びつくわけではないが、県では「生態系に影響を及ぼす可能性もある」として被害状況や今後の推移を慎重に見極めていく考えだ。
(稲田雅文)
ミズナラやコナラが赤く変色して目立つ山の斜面=南砺市で(いずれも県林業試験場提供)
◇葉が赤く変色
被害が表面化するのは、八月から九月にかけて。周りの木は青々と葉を広げる中、被害を受けた木の葉は赤く変色。南砺市や上市町、朝日町などの被害が集中した地点では紅葉を迎えたかのような光景が広がった。
県林業試験場(立山町吉峰)の敷地で被害を受けたコナラを見た。幹を遠目に見るだけなら健康そうだが、見上げるとすべての葉が赤く変色。近づくと、地面から高さ二メートルほどまでの幹に直径約二ミリの穴が無数
に開き、根元には穴から排出された木くずやふんが積もって真っ白になっていた。
カシノナガキクイムシは体長五ミリ弱の昆虫で、雄が六月から七月にかけてブナ科の太い樹木の幹に巣穴を開けて侵入し、雌を誘い込む。雌が巣穴に入ると、体内で共生する「ナラ菌」が樹木内で繁殖。幼虫の餌とな
る一方、菌が水の通り道である道管を破壊する。
被害に遭った木は、水を吸い上げる力が弱まると、夏以降に葉が赤くなり立ち枯れする。翌年には、夏前になると枯れた木から成虫になった個体が飛散を始め、被害が拡大する。
◇県全域に拡大
全国的にも、日本海側を中心に二十二府県に被害が広がっている。県内は近隣の県に比べ被害の広がりは遅かったが、石川県側から侵入。二〇〇二年に南砺市(旧福光町)で被害が確認され、〇五年にほぼ全域に広
まった。〇六年に県西部での被害が減少して県全体でも被害が減少したが、今年は県内全域で被害が拡大。被害量は二万六千七百六十立方メートルと昨年の四倍になった。
県林業試験場主任研究員の松浦崇遠さんは「被害は一九三〇年代から報告されているが、拡大が目立ち始めたのは九〇年代以降。昭和三十年代以降、燃料として伐採してきたコナラやミズナラを使わなくなり、年老い
て大きな木が増えていることを原因と考える研究者もいる」と話す。
同試験場が旧福光町で実施した調査では、被害の発生から二、三年でコナラが全体の14%、ミズナラが69%の本数が枯れ、特にミズナラが弱いことが分かった。
また、羽化した成虫の数は標高五百メートル以下の場所で多く、防除する場合は五百メートル以下の標高を優先した方が効果的なことも分かってきている。
ただ、防除する有効な方法はまだ見つかっていないのが現状だ。予防的に木の幹にビニールを巻く、接着剤を塗る、殺虫剤を使うなど、さまざまな手段が考案されたが、どれも手間や環境への影響などで限定的にしか
対策を取れなかったという。
◇急斜面に多く
何より、ミズナラやコナラは急斜面に生えていることが多く、対策をしたり伐採をしたりする際、危険だったり作業性が悪かったりして、手をつけることすら難しい場所も多い。
県は一般会計当初予算に対策費五百五十四万円を盛ったほか、被害の拡大を受けて九月補正予算でも四百二十一万円を計上した。しかし、木が倒れると危険がある場所の伐採と駆除に限定され、猛威を食い止める
ほどの対策は取れていない。来年は、これまで猛威をふるってきた県西部では落ち着くと見込まれる一方、県東部では被害の拡大が予測されている。
ミズナラやコナラが枯れても、他の樹木が生えるなどして翌年には一見、山の緑は回復する。大きな災害などにつながるかどうか、はっきりとは分かっていない。
それでも松浦さんは「何十年もかけて育ってきた森が短期間で姿を変えることは、生態系が大きく変わってしまう可能性もある」と指摘。ミズナラやコナラが減った地区で今後、どのように森が姿を変えていくか、調査を
続けていく考えだ..
このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。
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