ID 4499
登録日 2007年 8月21日
タイトル
十和田市は焼山温泉郷に近い山中で確認された巨木
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新聞名
天地人
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元URL.
http://www.toonippo.co.jp/tenchijin/ten2007/ten20070821.html
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元urltop:
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写真:
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緑の空間にすっくと立つ樹幹。辺りを圧する、どっしりとした量感。先日の本紙夕刊を飾ったブナの森の写真は、涼味たっぷりだった。十和田市は焼山温泉郷に近い山中で確認された巨木だという。
その数日前の朝刊には冬枯れのようなブナ林の写真があった。こちらは八甲田の風景で、今年も大発生したブナアオシャチホコの食害のほどを伝える。そんなわけで巨木のみずみずしさが、一層目を引いた。高さ四
十二メートル、幹周り五メートル余、樹齢は約四百年で、国内最大級のブナという。森の主が見つめてきた、はるかな時空を思う。
樹木は人間の想像力を常にかき立ててきた。命と豊饒(ほうじょう)をはぐくむ自然の奥深さを象徴するからだろう。洋の東西を問わず、民俗や信仰、文学などが語ってきたことだ。神が宿る場とされてきた日本では、そ
れゆえ古木や巨樹は大いなるものだった。かつて旧金木町の山の中で、十二本に幹が分かれたヒバの大木を見たことがある。その奇怪な造形に畏(おそ)れすら感じたことだった。
今度確認されたブナの巨木にも、地元の人たちのそうした思いが込められてきたようだ。悠然と時を刻んできた姿に、現代の詩の言葉も重ねてみる。「木は囁(ささや)いているのだ ゆったりと静かな声で/木は歩い
ているのだ 空にむかって」(田村隆一「木」より)。
秋が来ればブナの森は鮮やかな黄色に染まり、やがて葉を落とす。そして再び新緑へと。その盛んな営みを支える環境が、森の主の命も守ってきた。この先も、そんな風景が続けばいい..