ID 3928
登録日 2007年 5月28日
タイトル
日本最古アーチ式ダムが橋の陰に
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新聞名
東奥日報
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元URL.
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070528090935.asp
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元urltop:
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写真:
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県は二〇〇七年度の開通を目指し、むつ市に国道338号宇曽利バイパス(延長一・二キロ)の建設を進めている。バイパスは、桜の名所として知られる水源池公園を横切るルートで、県重宝・日本最古の石
造りアーチ式ダムのすぐ前には橋を建設中。市民からはバイパス開通効果に期待の声がある一方「景色が変わってしまった」「きれいで静かな場所だったのに…」という驚きやとまどいの声も上がっている。
アーチ式ダムは、一九〇九(明治四十二)年に旧海軍大湊要港部が水道施設として建設。七六年まで実際に利用され、八四年にむつ市文化財、九三年に県重宝の指定を受けた。春は釜臥山を背景に、風情あるダムと
桜の調和が美しく、多くの市民や観光客が訪れる。
建設中の橋は延長五五・八メートル。現場は現在、作業用の足場も組まれているため、完成時よりさらにダムの姿が隠れる状態になっている。
目の当たりにした市民からは「便利になるのだからやむを得ない」(五十代男性)との声も聞かれる。だが、ツツジを見ようと公園を訪れた近くの六十代女性は「道路ができることは昔から知っていたが、まさかここを通
るとは思わなかった」と驚き「今になって言っても遅いのでしょうが、一番眺めの美しい場所にどうして…」と複雑な表情。県内に住む四十代の女性も「久々に帰省して花見に行ったら、昔と全然違って驚いた。今まで守っ
てきた文化財なのにもったいない」と話す。
県は七五年、地域の幹線道路である国道338号の渋滞緩和や安全確保を目指し、市中心部を迂回(うかい)するバイパスとして同市柳町-桜木町に都市計画道路(延長約一一・一キロ)を都市計画決定。これに沿って
大湊、むつの両バイパスを整備し、宇曽利バイパスは九四年度に事業着手した。
だが、都市計画決定のルートはアーチ式ダムのすぐ下流を橋が通る形。このため県は、文化財の保護や景観の保持、公園と橋の調和などを目指し、二〇〇〇年に「公園大橋(仮称)景観検討委員会」を設置。景観や構
造、植物、文化財保護の専門家や地元関係者らが翌三月までに四回の協議を重ねた。工事はこの時の提言を尊重して進められている。
委員長を務めた八戸工業大学の長谷川明教授(感性デザイン学部長)は「道路の位置を上にも下にも動かすことが不可能で、やむを得ずこの場所にし、景観への影響を最小限にする努力をしたのが実態」と説明した上
で「なぜここに-という疑問に対し県は今後、ここを選ばざるを得なかった経緯を説明していく必要もあるだろう」と話す..