ID 3283
登録日 2007年 3月28日
タイトル
住友林業、DNAによるクローン桜の鑑定技術を確立
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新聞名
日経プレスリリース
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元URL.
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID =156444&lindID =4
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元urltop:
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写真:
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住友林業株式会社(社長:矢野龍 本社:東京都千代田区丸の内1丁目8番1号)は、組織培養技術を用いて京都・真言宗醍醐派總本山醍醐寺の三宝院の大玄関前の枝垂桜(しだれざくら)、通称「土牛の桜」の
クローン化に成功し(2000年)、当社の研究施設である筑波研究所及び住友林業グループにて、この枝垂桜の苗を「太閤千代しだれ」と命名し、その増殖に取り組んでおります。
この度、増殖に成功したクローン苗が遺伝的に同一の個体であることを証明するために、DNAによる桜のクローン鑑定技術を独自に開発し、その技術の確立に成功いたしました。この技術確立により、苗の供給を担
当している住友林業緑化株式会社では、苗1本1本にDNA鑑定書を添付し、苗の正当性を科学的に証明する管理方法を採用します。
このクローン苗の鑑定には警察の捜査や親子鑑定に用いられているマイクロサテライト法というDNA配列による識別技術を活用しました。
今後は、本技術を桜だけでなく他の植物にも応用し、樹木の生い立ち、種や個体の識別、種の多様性など多方面にこの技術を活用していく予定です。
■クローンの鑑定手法
DNAとは、遺伝情報を記憶している鎖状の物質で、デオキシリボ核酸という核酸の一種であり、生き物の体をつくる設計図(遺伝子の本体)です。また、生物それぞれの個体の持つ様々な性質に関係する基本情報が記
録されております。マイクロサテライトとは、ゲノムDNA上の同じ構造を持つ部分が2~5対繰り返し並んでいる部分を差します。
マイクロサテライトのほとんどは遺伝情報を持ちませんが、生物の個体間で繰り返し回数の違いが生じやすい特徴があるため、個体識別に利用可能です。今回、この部分の長さの違いを利用して、枝垂桜の個体の識
別を行いました。
■醍醐寺枝垂れ桜のクローン苗検証
枝垂桜のクローン苗は、茎頂培養法を用いて増殖しておりますが、茎頂培養で増殖した苗は理論的にはクローン苗になると言われております。2000年に苗の開発に成功した際、元静岡大学(現岐阜大学)の向井教授
のご協力により遺伝子鑑定を行いクローンであることは立証されておりましたが、今回、改めてこの「太閤千代しだれ」をマイクロサテライト法を用いて鑑定したところ「土牛の桜」と全く同じ遺伝子型を有していたことか
ら、増殖した枝垂桜の苗がクローンであることが立証されました。
また、醍醐寺境内のその他の桜とクローン桜である「太閤千代しだれ」を比較したところ、違う遺伝子型を有していることが判明し、このマイクロサテライトが桜の識別に有効であることも立証できました。
<ご参考>
当社では、本技術を社会的にも役立てたいと考え、醍醐寺の境内にある枝垂桜の巨木の血縁関係の解明と、品種が不明であった巨木の品種解明に本技術を応用したところ、下記の通り新事実が判明致しました。
■醍醐寺境内の枝垂れ桜巨木の血縁関係検証
醍醐寺境内に生育している15本の枝垂れ桜の巨木について、上記技術を用いてDNA鑑定を行ったところ、血縁関係にある桜が多いが、遺伝子型が全て一致するものは存在しないことから、これらの桜を200年前に
育てた人々は、挿し木や接ぎ木といったクローン技術は用いず、種子で苗を繁殖していたことが判明しました。
■醍醐寺境内のソメイヨシノといわれる巨木の検証
醍醐寺霊宝館の敷地内には、多数の枝垂れ桜の巨木が生育していますが、一見して枝垂れ桜とは異なる種の桜の巨木があり、以前より関係者や参拝者の間でその正体が知りたいとの声が上がっておりました。醍醐寺
の樹木の管理を通し、ソメイヨシノとの推測がなされておりましたが、関西でこのようなソメイヨシノの巨木があるのは珍しく、断定がされていなかったものです。
全国にあるソメイヨシノが江戸時代に育種された1本のソメイヨシノから接ぎ木等のクローン技術によって増殖されたものであることと、本技術がクローン鑑定に利用できたことから、公園や街路樹として植えられている
ソメイヨシノとこの霊宝館の巨木のDNAを解析することにより、巨木の素性を明らかにすることができると考え、本鑑定技術を使い、DNA解析を行いました。その結果、この巨木がソメイヨシノであることが解明されました
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環境省が調査・発表している「巨樹・巨木」のうち、ソメイヨシノは196本の登録がありますが、関西以西にはソメイヨシノの巨木は10本しかなく、京都には現在のところ3本の登録しかありません。巨樹・巨木の定義は、幹
の円周が3m以上となっており、醍醐寺のソメイヨシノは円周が3.25mあることから、この規定を満たすこととなります。公表ベースでは、京都で4本目のソメイヨシノの巨木となり、さらに主幹の太さだけで言えば、京都
で最も大きなソメイヨシノとなります..