ID 2770
登録日 2007年 2月15日
タイトル
熊楠贈った苗木成長 民家のトウオガタマ
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新聞名
紀伊民報
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元URL.
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=119811
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元urltop:
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写真:
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66年前、南方熊楠が亡くなる3カ月前に、親交のあった樫山嘉一さん(1963年死去)に贈った「トウオガタマ」(モクレン科)が、今も上富田町岡の民家で大切に育てられている。熊楠から直接手渡された二女
の光子さん(81)ら家族が見守っており、今年も花を付けるのを楽しみにしている。
トウオガタマは「カラタネオガタマ」「含笑花(ガンシュウゲ)」とも呼ばれる中国南部原産の木。4月下旬に白っぽい花を咲かせ、甘い香りを漂わせる。
もらった時は高さ約40センチの小さな苗木だったが、いまでは高さ約3・5メートル、幹は直径25センチまで育った。
木のそばには「和名トウオガタマ モクレン科 南方熊楠先生記念樹 昭和十六年九月二十八日」などと刻まれた石柱が立っている。
最近になって、南方熊楠顕彰館に保管している熊楠の日記から、熊楠と親交のあった横浜市の研究者平沼大三郎氏(1900~1942)が熊楠に直接贈ったものと分かった。
日記には「十時、樫山氏第二女来り、三升四合麦の粉パン粉、茄子及菌少々くれる。予起出て此朝平沼氏より着セルカラタネオガタマの苗を箱に入れたまま贈り持ち帰らしむ」と記されている。
光子さんは子どものころから、嘉一さんと自宅近くの山で珍しいキノコや粘菌を採取しては熊楠宅に持って行っていた。
光子さんによると、ある日、いつものように熊楠宅へ行くと、今朝届いたという縦、横約50センチの木箱に入った苗木を手渡された。光子さんは自転車の荷台に載せ、恐る恐る上富田町岡の自宅へ持ち帰った。
熊楠は当初、県事務所に植えてもらおうか、田辺中学校か女学校に贈ろうかと思案したが、所長や校長、生物の教諭らが異動したら世話が心配だと考え「樫山嘉一さんなら大切にしてくれるだろう」と、光子さんに手渡し
たという。
受け取った嘉一さんは庭に植え、毎朝手を合わせて拝んだ。しめ縄を張り、神木として大切にしていたという。落ち葉一枚一枚も集めて大切にし、庭に棚を作って保管した。風の強い日の翌朝は、庭の至る所から葉を
探して拾い集めたという。
光子さんは「亡くなる直前の南方先生から頂いた物なので、父は大切にしていた」と話し、父の遺志を継いで見守っている。
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