ID 3475
登録日 2007年 4月11日
タイトル
桜さまざま(5)福島 三春の滝桜 伊達政宗の正室愛姫の里の1本桜
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjan.jp/culture/0704/0704093464/1.php
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元urltop:
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写真:
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福島県三春町に「三春の滝桜」(住所:田村郡三春町大字滝字桜久保)と呼ばれるしだれ桜(エドヒガン系紅枝垂桜)の古木がある。この桜は、いつの頃からか、日本三大桜(他に岐阜の薄墨桜、山梨の山高神
代桜)のひとつに数えられる美しい1本桜である。
樹木は、小高い丘の中腹にあり、樹高は12mと、さほどでもないのだが、幹廻りが11m近くあり、枝が東西に25m、南北に18.5mもあるため、満開になった時には、丁度花の滝のように見えることから「三春の滝桜」の
名称が付されたものと言われている。
下からこの桜を見上げると、その風情は、とにかく圧倒的な迫力がある。この周辺は、その昔、田村氏が藩主として開発したところである。藩主は、特にこの滝桜を寵愛し「御用木」として大切に保護してきたようである
。何でも藩主は、この桜を保護させるために、この界隈の農民の税を免除し、桜の世話に当たらせたというエピソードまである。
樹齢については、桜の幹に一度穴が空き、そこに再生根と呼ばれる新たな幹が穴を埋める形で生えて来たという経緯から、正確には不明であるが、専門家の見方では、千年ほどではないかと見られている。
現在の三春町は、人口2万人を切る小さな町だ。しかし滝桜という1本の桜を地域住民の誇りとしながら、築かれてきた美しい町である。城下町三春の風情を色濃く残す通りを散策していると、明らかに滝桜の子供と思
われる桜が、ほどよくしだれ、少し紅色がかった花を咲かせている姿が、そちこちに見られる。
これはおそらく、この三春の住人が、藩主ゆかりの名木を崇敬し、自分の家屋の庭に、その苗木を植樹し、家宝のように、大切に形を整えてきたものだろう。
藩主ゆかりの菩提寺や武家屋敷などにもこの滝桜の子供と思われる桜が、品良くしなりながら、千年の命を永らえている周辺で、すくすくと育っている。何と美しい光景ではないか。
毎年、地元の住人たちは、花の時期の前には、総掛かりで、この滝桜周辺を清掃し、遠く関東から観光バスなどを連ねてやってくる花見見物の人々を迎える準備を整えるのだという。まさに三春は、1本の桜が住民のア
イデンティティとなり、生活の原動力となっている。このような町が、市町村合併の嵐の中でも、合併をせずに存在しているのは、さまざまなことがあったにせよ、認めても良いのではと思う。何も合併で大きくなるだけが
生きる道ではない。
吉野山は、一山全体が桜の園というイメージがある。それに対しここ三春では、ただ1本の名木が藩主によって発見され、その奇跡のような美しさを持つ桜を中心にして、この三春という城下町の景観整備されてきたよ
うに感じられる。
ところで、私の弟は、この桜の苗木を、購入し実家の庭に植えているが、今年で丸8年になるが、一向に咲く気配がないといぶかっている。幹はそれなりに太くなり、羽振りも良いのであるが、まったく咲こうとしない。や
はりソメイヨシノとは雲泥の寿命の差があるようだ。寿命の長い樹木というものは、おいそれとは咲かない。笑ってしまうような話しであるが、そこが良いのであろう。名木の子はおいそれとは咲かないのである。
おいそれと咲かぬ三春の滝桜蒼き空から花ふるごと
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