ID 2547
登録日 2007年 1月23日
タイトル
地表の風景 カシの実 栗林慧
.
新聞名
東京新聞
.
元URL.
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sci/20070123/ftu_____sci_____001.shtml
.
元urltop:
.
写真:
.
ここは大きなカシの木の下、まるで食事のときに使うおわんが転がっているように見える。この場所は、少し前の季節に樹上から落下したカシの実が無数に転がっていたところ。
その実を、鳥やネズミのような動物が持ち去ったあとに、こうして実を支えていた殻斗(かくと)(ドングリの帽子)だけが残って散らばっているところである。
冬の寒々しい風景の中にも、林に入って腹ばいになり、そこの地上を見回してみると、いろんな形のものが転がっているのが見えて楽しい。
子供のころにこうして遊んだことがあったのをふと思い出した。
そのころはおもちゃも少なかったから、木かげでドングリのたぐいを集めるのが大きな楽しみだった。
このあたりは九州の典型的な里山で、常緑のカシ、シイ、タブ、クスノキといった木々からなる林と、草原、それに人家が点在していた。
林の中を歩き回り、ポケットいっぱいにさまざまな形をしたドングリを入れて、家に持ち帰ったりしたものだ。ドングリの周りには虫たちもいた。私の昆虫観察の出発点は、そんな里山の自然だった。
(くりばやし・さとし=生物生態写真家、長崎県平戸市在住)
カシの実(ドングリ) ドングリの木というのはなく、ブナ科のうちコナラ属、シイ属、マテバシイ属の実を総称して言う。カシはコナラ属に含まれる。茶色くて硬い皮に覆われた実(堅果)と、それを覆う帽子のような殻斗か
らできている。殻斗は、ドングリが成長するまで守る衣服の役割を持っている。
ドングリの堅果はでんぷんなど栄養が豊富で、縄文人の主食といわれている。すりつぶしてクッキーを作ることもできる。
..