ID 2536
登録日 2007年 1月22日
タイトル
国立公園の危険木伐採どこまで?
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新聞名
東奥日報
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元URL.
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070122111858.asp
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元urltop:
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写真:
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十七日に判決があった十和田八幡平国立公園内の奥入瀬渓流の遊歩道落枝訴訟で、東京高裁は一審に続き県と国の管理上の欠陥を認めた。事故は予測できたとして「不十分な安全点検で、危険性が見過ごされた」と
一審以上に踏み込んだ指摘をした。県と国は上告を検討中だが、自然公園の施設整備に当たる県の担当者らは「国立公園内の自然は手を加えないことが基本。枯れ木伐採では自然保護団体から抗議を受けた。どこまで
点検、伐採すればいいのか…」と、板挟み状態に置かれている。
二〇〇三年八月に落枝事故が起きる前、同渓流の危険木点検は春の年一回だった。〇〇年度までは国立公園を所管する旧環境庁が主催し、林野庁と県、旧十和田湖町、関係団体が参加した。環境庁出先機関の機能移
転などで、〇一年度以降は県が合同点検を呼びかけてきた。
だが、危険木の判定や伐採許可は国が担当していた。全長十四キロの奥入瀬渓流は国立公園の特別保護地区などに指定され、森林法や自然公園法、文化財保護法などさまざまな法律の制約を受けるからだ。自然公
園業務の経験がある県職員は「特別保護地区では樹木の伐採はもちろん、傷つけることも厳しく制限されている。事故前、単なる枯れ枝は伐採できなかった」と話す。
落枝事故を受け、県は緊急点検を実施。再発防止のため、確認できた枯れ木や枯れ枝はすべて切ることとし、〇三年度は五十九本の立木を伐採、七十六本の木の枝払いをした。〇四年度以降は点検作業を毎月一回に
増やし、〇五、〇六年度は、それぞれ約二百三十本を処理した。
ところが、二審判決は「事故前の点検は三時間程度で、危険木の伐採は一本くらい。時期的、時間的、内容的にも極めて不十分だった」と判断。点検強化が逆に、事故前の点検不備を反映する材料とされた。
枯れ木伐採には、自然保護団体の反対にも遭った。「奥入瀬渓流には枯れ枝が無数にある。伐採がどこまで許されるのか、国は危険木管理のガイドラインを定めてほしい」と、この県職員は漏らす。
「管理者の県と国には周到な安全点検が求められた」と責任を明確にした二審判決。判決後、小林正基県商工労働部長は、判決確定前ながら「点検強化をしていかざるを得ないが、いつ何が起こるかは分からない。こ
れは奥入瀬に限らず、他の観光地でも同じこと」と、自然公園を抱える他の自治体にも共通の課題になると話した。
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