ID 2455
登録日 2007年 1月12日
タイトル
富士山 巨樹ピンチ
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000000701120006
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元urltop:
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写真:
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訪れる人急増 根本踏まれる
富士山の宝永山真下にあるアザミ塚で、ブナなど県内有数の巨樹が危機に立たされている。明治時代以降、近くの須山登山道が廃れてササが茂り、巨樹の存在は一部にしか知られていなかった。しかし、最近の自然ブ
ームで訪れる人が急増、根元が踏み固められて樹勢は衰える一方なのだ。巨樹は1707年の宝永噴火を生き延びたとみられ、学術的にも貴重とされる。噴火から300年。自然保護団体は木の周囲への立ち入り制限など
保護策を望んでいる。(洞口和夫)
◇保護団体 対策を要望
巨樹は富士山の南東側、御殿場市の標高1630メートルの自然林にある。国や県、NPO法人の富士賛会議、富士山クラブなどが現地調査し、20本以上の巨樹・巨木を確認。「隠された富士山の新しい魅力」として戸籍
づくりを進めている。
御殿場市中畑の映像作家で、富士山クラブのメンバーとして調査を続ける勝又幸宣さん(57)によると、幹回りが最大約6・35メートルのものをはじめ、県内の上位を独占するようなブナが狭い範囲に8本ある。幹回り
4・55メートルで県内最大級のイヌザクラや、3メートル級のミズナラ、サワグルミも成育しているという。
しかし、「巨樹の周辺では深刻な表土の消失、根の露出が進んでいる。10年前の写真と今年の写真を比較すると、腐葉土などが積み重なった表土が、人に踏まれるなどして10~15センチの厚さでなくなった」と勝又
さんは警告する。
約10年前、須山口登山道の復活を目指す地元の有志たちが高さ2メートル前後のササを刈り、観察会を開いた。こうした動きもあって巨樹の存在が口コミで広がり、多い日には100人規模で立ち入るようになったこと
が原因とみられる。
これまでの県内のブナの幹回り最高は、函南町の函南原生林にあった6・35メートル(高さ24メートル)の1本。88年、当時の環境庁の「緑の国勢調査」で「日本一」になった。その後、入山禁止の民有林に見物人がどっ
と訪れ根元まで近づいたこともあって、老木は衰え、昨年6月に倒れた。
同市二枚橋の富士賛会議専務理事の三井明さん(73)は「富士山の木が残ったのはササが視野をさえぎり、登山者に気づかれなかったからだ。すばらしい財産を後世に残すため、函南の二の舞いは避けたい」と訴える
。
300年前の宝永噴火は、多量の火山灰を降らせ、巨木群の真上や真下は最高2メートルもの灰や火山礫(れき)に覆われた。その影響を受けながら、なぜ巨木は生き延びたか。
調査に当たった樹木医の秋山憲行・富士市みどりの課長(59)は「大半の森が失われる中で、山腹の起伏が幸いして火山礫の量が少なかった。根っこが残り、かろうじて生き残った。このため、根元付近から幹が分かれ、
他地域のようにまっすぐ上に伸びず、背は低く、特異な形をしている」と分析する。
自然林を管理する静岡森林管理署は「県とも協議して巨木を守る対応をしたい。ササが自然に蘇生して根を守り、見物の人は根元に近づかず遠くから見るような形になると思う」と話している。
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