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- ID:
- 40874
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0228
- 見出し:
- 唐崎の松 命のリレー
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20180228-OYTNT50118.html
- 写真:
- なし
- 記事
- ◇3代目の種から4代目移植 近江を代表する風景・近江八景の一つ「唐崎夜雨からさきのやう」で知られる唐崎神社(大津市)の松の近くに、DNAを受け継いだ若木が28日に植えられる。今の松は明治時代に植えられた3代目だが、40~50年前から樹勢が衰え、昨年秋には枯れた幹が大きく切られてしまった。関係者は「日本が誇る名木。満身創痍そういでも種を残した3代目の思いに応えたい」と、若木を立派に育て、次世代に引き継ぎたい考えだ。(渡辺征庸) ◇関係者「数百年かけ育てる」 唐崎神社を管理する日吉大社などによると、大和(奈良)から近江に招いた神が降り立った松だと伝わり、古代から神木として大切にされた
安土桃山時代に植えられたという2代目が特に有名で、江戸時代には歌川広重が勇壮な枝ぶりを浮世絵に描いたり、松尾芭蕉が「唐崎(辛崎)の松は花より朧おぼろにて」と詠んだりした。長寿の象徴として諸大名が種を領国に持ち帰り、兼六園(金沢市)では今も「唐崎松」として育てられている
今の3代目は1887年(明治20年)、2代目の近くに植樹された。2代目と同様に太い幹が南北に分かれる「双幹立ち」で多くの人の目を楽しませたが、1961年の台風などで被害を受け、徐々に内部が朽ちて空洞化。84年には南側の幹が枯れて上部が切られるなどした。以後、空洞部にはウレタン樹脂で埋めるなどの手当てが施されてきたが、昨年秋には北側の幹が枯れ、被害の拡大を防ぐために切られた
造園業辻井博行さん(48)は、2011年に松の管理を託された直後から、松ぼっくりから採取した種を発芽させ、別の場所で後継樹35本を育ててきた。だが、昨秋の3代目の被害を受け、〈親〉の近くに後継樹を移植しようと決断。4代目にふさわしい双幹の若木を選び、3代目から約10メートル離れた場所へ移植する
辻井さんによると、3代目は80~90年代に枯死してもおかしくない状態だったが、今も命脈は保っている。「昨秋に幹を切ったのは残念で仕方なかったが、その分、3代目が命がけで残した後継樹を数百年計画で立派に育てたい」と意気込む
日吉大社の馬渕直樹宮司も「今年は松に降り立った神様が日吉大社に鎮座されて1350年目。大切な神木を後世に伝えなければならず、順調に育つことを祈りたい」と話している
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