v10.0
- ID:
- 39372
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0823
- 見出し:
- 宮崎県諸塚村企画課長・矢房孝広さん(3)人のつながりを重視
- 新聞名:
- 産経ニュース
- 元URL:
- http://www.sankei.com/region/news/170823/rgn1708230048-n1.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- この連載の主題である「地方創生」。人口減少社会に突入した日本で、行き詰まったデフレ経済の再生の手段として、東京一極集中を是正し、地域に人を戻し、地域の活力を取り戻そうというものです。諸塚村が取り組む活性化は、まず人のつながりを重視しています
全国的な取り組みで、最近話題のふるさと納税制度も地方創生策の一つです。ここ数年で急増し、平成28年度の寄付総額は2844億円。この制度では、通常自分が住んでいる自治体に支払う税金を、寄付によって自分で選んだ自治体に納付できます
でも、寄付額急増の理由の一つは、返礼品競争の過熱です。多くの自治体が、お礼の商品の豪華さ、「利益」を競うようになっています。寄付額に対する返礼品価額の割合が、50~80%のものが多く、中には90%という特殊な事例もあるようです。貴重な税金を、頑張る自治体に配分しようという試みが、結果的に個人に戻っています
寄付どころか、納税制度の本質から外れてしまっている気がします
昨年の熊本地震の折に、諸塚村は被災地支援の一つとして、事務手続きの困難な被災自治体に代わって、受け付けだけを代行するふるさと納税の代理受納を行いました。間接的な受納で、被災自治体への支援ですから、個人への「返礼品」はありません。それでも、全国から多くの寄付が集まりました
まさしく「ふるさと納税」の精神によるものです
地方創生の本質は何か-。中央の大都市ではできない、地方ならではの取り組みを評価し、その施策を応援する制度でしょうか。現代社会では経済はとても重要ですが、経済性だけが独り歩きしがちです。お金だけでは解決が難しい課題も多い。逆に、お金が問題を生み出していることも多く見受けられます
以前紹介した「森住八策」に「最初にお金を考えずに、人と資源を動かすことを優先する」があります。私たちは当然、経済性は考慮に入れますが、まずカネより先にヒトを考え、地域資源に価値(評価)を与え、流通させることを試みています
厳選した諸塚の木材を使い、都市部に家を作る「産直住宅事業」も、まず都市市民と会話する小さなセミナーや、木材産地の諸塚村へ招待する「木材産地ツアー」から始めました。人のつながりをつくることからスタートしたのです。平成9年のことですが、「木材価格」や「家の坪単価」を議論するより先に、使いやすい木材の品質管理を向上させ、住まい手(=住む人)優先の家づくりを続けました。その積み重ねが今につながっています
その後、木材産地ツアーの参加者からの要望もあり、10年に諸塚村の田舎暮らしや食、祭りなどを楽しむエコツアーが始まります。大きな装置型観光施設のない山村ですが、集落の民家を改修した「森の古民家」や農家民宿を活用した素朴な体験ツアーが人気を呼び、今年通算150回を達成しました
村と都市住民の間に、確かなつながりができたのです
小さな山村では、大都市と経済の競争をしても、勝負になりません。人を重視し、人間の関わりを大事にする施策に取り組む、これは大都市では難しい。ひとりひとりが主役になれる「地域」であるからこそできるものです
「○○がない」「××が悪い」などと、課題の本質を見ずに他人のせいにするのはやめて、自らの取り組みを見つめ直す機会にしたい
いたずらに競争に走らず、冷静に住民ニーズに対応し、自分らの取り組むコトや、つくるヒトとモノ、そしてそれが生み出す価値が今の住民にも、次世代にも評価されるように努力したい。それが地方創生になると思っています
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