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- ID:
-
39033
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0713
- 見出し:
- 《経済》 軽くて丈夫 CNFの量産化目指す
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20170713/CK2017071302000101.html
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- 【写真】
- 記事
- 日本製紙・富士工場樹脂にセルロースナノファイバー(CNF)を混ぜて強度を高めた「CNF強化樹脂」=富士市の日本製紙富士工場で写真 軽くて高強度な木質由来の新素材・セルロースナノファイバー(CNF)の研究開発に取り組む製紙大手の日本製紙(東京)は、富士市の富士工場で建設を進めてきた「CNF強化樹脂」の実証生産設備を稼働し、十二日に報道陣に公開した。「次世代新素材」といわれるCNFを混ぜて強度を高めた樹脂は自動車部品や家電などで活用が期待されており、日本製紙は技術やコスト面の課題を検証しながら、将来の量産化を目指す
工場敷地内にある建屋の中に、原料の木材パルプが水となじまないようにする「疎水化処理設備」と、CNFと樹脂を混ぜる「強化樹脂混練設備」を設けた。工程は、疎水化したパルプの主成分のセルロースを繊維にほぐしてCNFをつくりながら、樹脂と混ぜ合わせる。年間約十トンの生産量を見込む。自動車や家電、建材などの関連メーカー向けにサンプルを提供しながら活用法を広げる計画だ
疎水化したパルプと樹脂を混ぜ合わせ、CNF強化樹脂を製造する混練設備=富士市の日本製紙富士工場で写真 自動車ではバンパーやドアパネルなどでの活用を想定する。現行のガラス繊維を混ぜた強化樹脂より軽く、少ない配合量で同じ強度を確保できることから、CNF強化樹脂への代替が進めば車の軽量化や燃費向上につながると期待される
会見した山崎和文副社長は「自動車に求められる厳しいコストや品質基準を満たすことができれば、各分野への応用が進む。自動車分野での実用化にチャレンジしたい」と強調した
木質由来でリサイクルも容易なCNFは次世代素材として注目度が高い。経済産業省は自動車用CNF強化樹脂の市場に関し、二〇三〇年に年間五百億~二千五百億円の規模に成長すると試算。家電や化粧品などを含めた全産業用で一兆円規模になると予想する
写真 一方で、実用化にはコスト低減が欠かせず、自動車に多く使うポリプロピレンなどの樹脂の種類によっては、現状では十分な強度を確保できないという課題もある。山崎副社長は「自動車産業が集積する静岡県はCNFの研究開発の場所として望ましい。課題に取り組み、できるだけ早く量産化を実現したい」と述べた
日本製紙は〇七年、京都大を拠点とする新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに参加してCNFの研究開発を始めた。衛生用品や化粧品などに使うCNFは既に量産に乗り出し、宮城県の石巻工場などで今年から生産している
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