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- ID:
- 38626
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0531
- 見出し:
- 巨樹をたずねて⑫~梅雨の巨樹
- 新聞名:
- nippon.com
- 元URL:
- http://www.nippon.com/ja/views/b05312/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- にとって梅雨は、春先に使い切った栄養を夏に向けて蓄えていく大切な時期。人里離れた山奥で雨乞いの神様として崇められることもあるカツラや、琉球信仰の御神木など、雨の季節に映える巨樹を紹介しよう
共有する1シンプルビュー / 印刷新緑の色が濃さを増す晩春、木々は生命力に満ちあふれているように見えるが、実はそこまで元気でもない。特に落葉樹ともなると、秋に蓄えておいた養分を春先の成長に使い切ってしまうため、そろそろ栄養が尽きかけてくるのだ
ちょうどそのころ、北海道と小笠原諸島を除く日本列島に梅雨が訪れる。世界の平均のほぼ2倍とされる日本の年間降水量のうち、20~25%ほどが梅雨の時期に降るという。あらゆる植物の葉から蒸発する水分で霧が発生し、森全体がしっとりと潤う中、樹木は夏に向けて養分を蓄えていく
枝や葉についた霧が集まり水滴となって雨のように落ちてくる樹雨(きさめ)や、降り注いだ雨が幹をつたって根元に流れ落ちる樹幹流などの現象を見れば、生きている森がダイナミックに水を循環させているのが体感できるだろう
樹木にとって、ダメージにつながる台風シーズンの豪雨と違い、梅雨時のやわらかな雨は、多くの場合、恵みの雨だ。ただし多く降ればよいというわけではもちろんなく、長雨の日照不足は成長を妨げる要因ともなる。梅雨の時期に適度な雨に恵まれれば、水分と栄養素を十分に吸収した樹木が、夏の日差しを浴びてすくすくと育つことができるのだ
ところが日本人の多くが梅雨を快く思ってはいないようである。じめじめしてうっとうしい、洗濯物が乾かない、などと自分勝手なことを言う。しかし春に芽吹いた樹木にとっては、葉を茂らせ、枝を伸ばす、待ちに待った躍動の季節に入るときなのだ。雨を全身に浴びて喜びあふれる巨樹に会いに行けば、梅雨に対する考えも少しは変わるに違いない
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