v10.0
- ID:
- 37960
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0321
- 見出し:
- 巨樹をたずねて⑩~花咲く桜の下で
- 新聞名:
- nippon.com
- 元URL:
- http://www.nippon.com/ja/views/b05310/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 日本人と桜日本人はかつて、植物の開花や渡り鳥の飛来などによって季節を判断し、農作業の予定作りに役立てた。中でも桜は、年によって微妙に異なる寒暖を教えてくれる、もっとも優れた自然暦であった。葉よりも先に花を付ける桜は、その開花のタイミングで田植えの時期を判断するのに打ってつけなのである
種まき桜、田植え桜などと呼ばれて親しまれている桜が全国各地にあるのはそのためだ。指標植物としての役目を終えつつある現代でも、桜は地域住民から大切に敬われている。そもそも桜は、神が宿ると考えられた木である。花見の宴も、その起源は山から人里に下りてきた田の神を料理と酒でもてなし、豊作を祈る儀式であった
桜はまた、古来より死者と結びつけられる木でもある。全国各地の墓地で桜が咲き乱れる光景をよく目にするが、墓標として植えられたものが生長したのだろう。樹齢数百年とされる桜の巨樹の根元にも、数々の墓が存在する。いつの時代も、桜に見守られながら眠りたいという人は少なくないようだ。満開に花を咲かせた巨大な桜がいざなう幽玄の世界に足を踏み入れてみよう
三春の滝桜(福島県)
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