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- ID:
- 37836
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0306
- 見出し:
- つらい花粉症対策の切り札 無花粉スギの改良続く
- 新聞名:
- 東京新聞
- 元URL:
- http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201703/CK2017030602000144.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 林業分野からの花粉症対策の切り札として期待されている「無花粉スギ」。その品種の一つ「爽春(そうしゅん)」を開発した国立研究開発法人・森林総合研究所林木育種センター(日立市)は、人工交配などを通じ、無花粉スギの木材としての品質と成長速度の改良を続けている。二月には、若木の成長が早い「林育不稔(りんいくふねん)1号」を発表した。従来のスギと遜色ない育てやすさを林業関係者らにアピールしていく。 (酒井健) 爽春は二〇〇四年、高萩市内で採取し、センター内に植えられていたスギの中から職員が見つけた。挿し木で繁殖させた木も無花粉かどうか「再現性」を確認するなどして、〇八年に国に品種登録した
センターは、爽春の挿し木を首都圏などの都道府県の林業研究機関に出荷する一方、「精英樹」と呼ばれる成長の早いスギとの交配を重ねた。多様な組み合わせの中から、雄花が花粉を飛ばさず、木材としての品質も確保できている改良種を確認。爽春の発見から十二年をかけて林育不稔1号を開発した
種から育てた場合、精英樹が六年で六・八メートルまで成長する。林育不稔1号が六・六メートルなのに対し、爽春は六・四メートル。二十センチほどの差だが、林業の現場では下草刈りにかかる手間などが大きく違ってくるという。「精英樹と同等の成長性で、木材としてのボリュームもある。林業経営にも貢献できる」と同センターの星比呂志育種部長は期待する
今後は、挿し木や接ぎ木用の苗木を育てて、林業研究機関に配布、これらの機関を通じて林業経営者らに向けて普及を図っていく考えだ
また、爽春を親にして人工交配したスギが花粉を飛ばすかどうか、開花前に判定できるDNAマーカーも九州大(福岡市)と共同で開発に成功しており、今後の品種改良のスピードアップが見込めるという
◆品種少なく、苗木生産に手間 進まぬ植栽 スギの花粉症対策品種には、花粉が全く飛ばない「無花粉スギ」と、普通のスギの1%以下の「少花粉スギ」などがある
林野庁によると、二〇一五年度に全国で植えられたスギ約千九百八十四万本のうち、花粉症対策品種は約四百万本で、およそ二割を占める。しかし無花粉スギはまだ三万三千本程度。品種が少ないこと、苗木の生産に手間がかかることなどが植栽が進まない要因になっている
林野庁は一七年度、花粉症対策苗木を一千万本、面積にして三千三百ヘクタール程度まで増やす方針。ただ、全国のスギ林は四百四十八万ヘクタール。植栽から伐採(収穫)まで約五十年かかるとされており、世代交代を経て全て植え替えるには長い年月がかかりそうだ
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