v10.0
- ID:
- 36476
- 年:
- 2016
- 月日:
- 1001
- 見出し:
- もうすぐ紅葉狩りの季節。紅葉狩りの歴史と名所
- 新聞名:
- HOME'S PRESS(
- 元URL:
- https://www.nnn.co.jp/news/161001/20161001050.html
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- 記事
- もみじといえば手のひらの形に似た、秋に赤く染まる葉を連想する。しかし実は「もみじ」という平仮名の名称の樹木はない。「もみじ」は「紅葉」「黄葉」などの漢字をあて、秋に葉の色を変える現象、あるいは葉の色を変える樹木全般を指す言葉なのだ。「もみじ」は「もみいず」が語源で、葉の色が揉みだされるように変化するさまを表現した言葉だと言われている
現代の私たちが通常「もみじ」と呼んでいるのはカエデ属の樹木、特に、秋に美しい紅色に染まるイロハモミジだろう。しかし万葉集で「もみじ」は「黄葉」「黄変」の字があてられることが多い。これは、当時都のあった奈良の山に、ナラやクヌギなどの葉が黄に変色する樹木が多かったからとも、中国で使われていた熟語をそのまま「もみじ」に当てはめたからとも言われている。現代でも、秋の山を見やれば、赤より黄色に色づいている樹木の方が多いのではなかろうか
平安時代になると「紅葉」の字が使われ始める。しかし、猿丸太夫の“奥山に 紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき”(『古今集』)の歌にもある通り、紅葉は奥山で観るものであり、庭に植えて鑑賞するものではなかったようだ
紅葉狩りの歴史源氏物語第七帖『紅葉賀』(もみじのが)では、藤壺の懐妊を祝う「紅葉賀」が朱雀院で開かれ、若き光源氏が青海波を舞ったとある。しかしこれは源氏物語の中の行事で、宮中で執り行われた秋の行事はお月見や重陽の節句が主だったようだ。藤壺に想いを寄せる源氏のかなわぬ恋は、紅葉のように散りゆく運命を連想させ、キラキラしいというよりは、もの悲しさを呼び起こす
豊臣秀吉は晩年、醍醐の山に大量の桜を植え、豪華絢爛な花見の宴を開いたことが知られている。実は秋の紅葉狩りも、同じように計画していたそうだが、残念ながら紅葉の季節まで健康を保てなかった。秀吉にとっても、紅葉は人生の黄昏を象徴する樹木となってしまったようだ
江戸時代になると、庶民たちの間にも紅葉狩りの習慣が広がる。伊勢参りや熊野詣でで旅に出かける風習が生まれ、景色の良い風景を求めて遠出をするようになったからだ。『都名勝図会』などのガイドブックで紅葉の名所が紹介されると、人々が殺到したそうだ
また、第八代将軍の徳川吉宗は、現在の東京都北区にある飛鳥山公園に桜や楓を植樹している。春の花見と、秋の紅葉狩りは江戸の人々にとって重要な年中行事だったのだろう。人々は、お茶を飲んだり団子を食べたりしながら、紅葉を楽しんだようだ。現代と違うのは、俳句を詠みあったりもしたことだろう
江戸時代になると、庶民たちの間にも紅葉狩りの習慣が広がってきたようだ江戸時代になると、庶民たちの間にも紅葉狩りの習慣が広がってきたようだなぜ色が変わるのだろう紅葉の赤はアントシアニン系色素によるもの紅葉の赤はアントシアニン系色素によるものさて、それではなぜ、秋になると葉の色が変わるのだろう
樹木には常緑樹と落葉樹があり、紅葉するのは落葉樹だ。葉が落ちる理由は、冬になって太陽光が減ると、光合成で生まれる栄養分より、葉で消費される栄養分が多くなってしまうためだ。また空気が乾燥し、葉で呼吸をするたびに樹木の水分が奪われ、樹木のダメージが大きくなるのを防ぐためとも言われる
だから多くの常緑樹は背が高く、少しでも多く太陽光が取り入れられるようになっているはずだ。また常緑樹に葉の細い針葉樹が多いのは、水分の放出を抑えているのだ
葉が黄変するのは、気温が低くなると葉緑素が分解され、クロロフィルの緑色素が消えて、カロチノイドの黄色素だけが残るからだ。黄色に変化したあと紅色に染まるのは、栄養素や水分が無駄にならないよう、葉の根元に「離層」と呼ばれる蓋ができるから。すると葉に残った糖分がクリサンテミンなどのアントシアニン系色素に変化し、葉を赤く色づかせるのだ
クスノキやベニカナメモチなど、新芽が紅葉する樹木も、赤の色素はアントシアニン系だ。若葉は紫外線に弱いので、葉緑素を保護するために赤くなるのだと考えられている
同じように、秋の紅葉も、葉を赤くして紫外線を避け、樹木を守るために起きているのではないかとの説もある。しかし、葉を赤に染めることで害虫を除け、冬の間寄生されないようにしているのではないかとも言われており、よくわかっていないのが実情のようだ
紅葉の名所に出かけよう美しく紅葉するためには、「離層」ができてから、光合成で活発に糖分が生み出されなければならない。「離層」ができるのは気温が8度以下になってからとされているから、最低気温は8度以下ながら、昼間は太陽がたくさん当たった方が良いのだ。つまり、美しい空気と適度な水分があり、一日の寒暖差が大きく、太陽がよく当たる斜面に生えた樹木が美しく紅葉するということ。平地より山の上に紅葉の名所が多いのは当然だろう
京都の寺院などには、紅葉が美しい庭もあるが、秋は山全体が色を変えるので、大自然の中に出かけて、紅葉狩りを楽しみたいものだ
関東では・富士山まで一望できる箱根の芦ノ湖(神奈川)・日光いろは坂(栃木)・那須高原(栃木)・高尾山(東京)・尾瀬(群馬)関西では・多武峰(奈良)・光明寺(京都)・永観堂(京都)・比叡山(滋賀)・嵐山(京都)などが人気の高い紅葉狩りのスポットのようだ
このほか、北海道から九州まで、公益社団法人 日本観光振興協会が紹介する紅葉の名所は700前後もあるから、この秋は紅葉の名所に出かけてみてはいかがだろうか
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