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- ID:
- 36195
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0823
- 見出し:
- 富士の樹木医 石巻などで奮闘
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20160823/CK2016082302000047.html
- 写真:
- なし
- 記事
- ◆喜多さん「被災地元気づけられたら」「樹木の力で被災地が少しでも活気づけば」と話す喜多さん=富士市で写真 多くの学校や公園には、たくさんの人の思い出が詰まったシンボルの木がある。そんな樹木を東日本大震災の津波による塩害から救おうと、富士市の樹木医、喜多智靖さん(43)が、宮城県沿岸部で樹勢の回復に取り組んでいる。「樹木の力で被災地を少しでも活気づけたい」と語る
初めての仕事の一つが宮城県石巻市の大街道小学校。校歌に登場するバラ科のカイドウの木が裏門近くにある。喜多さんは友人の紹介で二〇一三年に訪れ、葉もほとんどない弱りきった姿を目の当たりにした
土壌の塩分濃度が海水で上がれば、塩でナメクジが縮むように木の根がしおれてしまう。雨で土が洗われても、塩由来のナトリウムの被害が何年も続く
喜多さんが水はけをよくする土壌改良を施した次の春、カイドウの木はピンクの花を満開にした。木の前で児童を呼び止め「校歌の由来だよ」と話す教頭先生や、喜ぶ子どもの姿が印象に残っている
喜多さんは金沢市出身。大学卒業後に北海道の農業団体に勤めた。経理畑を歩み、英国の大学院で経営学修士号(MBA)まで取得したが「性に合わない」と感じてきた。退職後の一一年、高校からの夢だった樹木医の資格を取った。しばらく樹木の仕事は少なく、一二年から一年間、経営学の知識を生かして被災地で起業支援に携わった。沿岸部では木が塩害で弱っており、次々に伐採された
「誰かが手当てするとばかり思っていたけれど、自分がやる以外にないと気付いた」 対象の樹木は行政が管理する学校と公園のシンボルツリーに定めた。「倒木の危険から伐採には行政の予算がつくが、弱った木を元気にするお金は出ない」と喜多さん。NPO法人・樹木いきいきプロジェクト(富士市)の発足を決め、資金と人手を集めた
これまでに宮城県の石巻市、東松島市の学校五校、公園一カ所で除塩を手掛けた。喜多さんは木の処置に向かない盛夏と真冬を除き、月のうち一週間を被災地で過ごしている
二十本の桜並木がシンボルの東松島市の赤井南小では、水を通しにくい硬い土質が障壁になり一四年から試行錯誤が続く。児童に塩分を吸うコスモスなどを植えてもらったり、富士宮市の富岳館高校の生徒が開発した耐塩性を高めるチップを試したり。今年六月に一本を除いて根が順調に出ていることが分かり「光明が見えてきた」という
赤井南小の桜並木で行政側から要望のあったシンボルツリーの処置は一段落する。喜多さんらは、学校や公園で除塩作業の後、新しい植樹も始めている
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