v10.0
- ID:
- 36075
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0806
- 見出し:
- ヒロシマの木
- 新聞名:
- 愛媛新聞
- 元URL:
- http://www.ehime-np.co.jp/rensai/chijiku/ren018201608066867.html
- 写真:
- なし
- 記事
- 広島市の報専坊という寺に、樹齢150年とされる見事な大イチョウが立っている。71年前のきょう、本堂は原爆の爆風に倒れたが、茂った青葉と木の水分が火災を食い止めた▲ 爆心地から約1.1キロ。傷痕は深く刻まれた。幹には割れ目ができ、爆心地側は木肌が傷んで平たくなり根の張りも悪く、少し傾いている。それでも春になると芽を吹き、秋にはたくさんの実をつける。原爆に耐えて生き抜く姿は、人々に明日への力を与えた▲ 本堂を再建する際、木を優しく包み込むように階段をくりぬいた。何としてもこの木を守りたいとの住民の思いの結実。それを平和学習で通う子どもたちが見つめる▲ 市は爆心地から半径2キロ圏にあったこのイチョウやアオギリなど約160本を被爆樹木として登録し、樹木医が定期的に治療を続けている。まちの一角で暮らしと歴史を見つめる「無言の語り部」たち。木肌に触れ、じっとその声を聴いてみたい▲ 「ヒロシマのデルタに/若葉うずまけ/死と炎の記憶に/よき祈よ/こもれ/とわのみどりを/とわのみどりを/ヒロシマのデルタに/青葉したたれ」(「永遠のみどり」原民喜)▲ 市は平和の思いを広げるシンボルとして木々の種や苗を国内外に配布。「2世」として植樹が進む。世界中で平和がしたたるまで育てたい。今は亡き人と、あの日を経験せずとも「語り部」の声に耳を澄ます人たちの、たくさんの祈りを重ねて
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