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- ID:
- 34711
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0127
- 見出し:
- 被災イチョウがコカリナに 奏者の黒坂黒太郎さん、常総市立大生小に寄贈へ
- 新聞名:
- 産経ニュース
- 元URL:
- http://www.sankei.com/region/news/160127/rgn1601270031-n1.html
- 写真:
- なし
- 記事
- ■「よみがえった楽器のように元気になって」 東日本豪雨による水害で被災したイチョウの木を使い、「コカリナ」と呼ばれる楽器の制作が進められている。発起人は埼玉県飯能市に住むコカリナ奏者の黒坂黒太郎(くろさか・くろたろう)さん(66)。2月下旬をめどに、イチョウが立っていた常総市平町の市立大生(おおの)小の児童に贈る。イチョウがコカリナとしてよみがえるように、子供たちにも元気になってほしい-。今回の取り組みにはそんな願いが込められている。(海老原由紀) ◇ 東日本豪雨が起きたのは昨年9月10日。被災し休校していた常総市の小中学校は同月24日から授業を再開したが、大生小だけは電気や水道が使えなかったため、当時、他の小学校の教室を借りていた
そんな状況を黒坂さんは昨年10月に長野県で開かれた「コカリナフェスティバル」の際に知る
教えてくれたのは国土地理院(つくば市)の職員らでつくるサークルのメンバー、浅野妙子さん(60)=常総市大生郷町=だった。茨城県内でコンサートを開いたことがあるという黒坂さんは「何か役に立つことができれば」との思いを募らせた
■ 10月26日、妻で歌手の矢口周美(かねみ)さん(63)と常総市を訪ね、大生小にも足を運んだ。そこで目に入ったのが、運動場近くのイチョウ並木で1本だけ黄色い葉を付けた木だった。幹の太さは直径約20センチで、根は腐っていた。この木に出合ったとき「呼び寄せられたような不思議な感覚を覚えた」という
その後、黒坂さんは学校の許可を得て、11月10日にイチョウを伐採。三重県にいるコカリナの制作者に託した。今年4月からの新入生を含めた大生小の児童約150人分のソプラノコカリナ(長さ8センチ)を完成させる予定だ。黒坂さんは「きれいな木目なので、良い音が出ると思う。子供たちが大事に育ててきたのでしょう」と語る
■ もともと黒坂さんはこうした活動を続けており、東日本大震災の被害を受けた子供たちにも、被災地ゆかりの木で制作したコカリナを贈っている
今回の制作費は、浅野さんら愛好家の有志で立ち上げた実行委員会主催の「常総水害被災地復興祈念 黒坂黒太郎コカリナコンサート」の収益を充てる。同コンサートは2月7日に守谷市内で開催されるが、すでに満員御礼の状態だ。イチョウで作るコカリナは今月中に2~3個が完成する予定で、黒坂さんはこのコカリナを使って演奏する
コカリナは、黒坂さんが約20年前にハンガリーから、「桜の木でできたオカリナ」と呼ばれる民族楽器を持ち帰り、木工家と改良して生み出した木製の楽器。長さや太さによって音域が異なる。小さな子供でも演奏でき、柔らかく優しい音が魅力という
大生小児童と一緒に演奏したいと思いをめぐらせる黒坂さんは「親しんでいるイチョウが楽器になってよみがえる。それが子供たちを励ますことにつながれば」と期待している。
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