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- ID:
- 35944
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0722
- 見出し:
- 「四万十ブランド」確立に挑む=ヒノキオイルでPR-高知・中土佐町
- 新聞名:
- 時事通信
- 元URL:
- http://www.jiji.com/jc/article?k=2016072100809&g=pol
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- 記事
- 人口約7300人の高知県中土佐町は、太平洋に面し、「土佐の一本釣り」で知られるカツオ漁などで栄えてきた中土佐地区と、日本最後の清流と言われる四万十川の上流域に広がる大野見地区で構成されている。大野見地区は約91%を森林が占め、古くから良質なヒノキの産地として知られる。町は今、「四万十ブランド」として町産木材をPRする活動を展開。その一つが、間伐したヒノキの葉から抽出したオイルの販売で、「オイルが売れることで町産ヒノキが有名になってくれれば」(農林課)と力を入れている
ヒノキオイルは、ヒノキの葉から抽出した100%天然の油。芳香性に富み、アロマセラピーや拭き掃除に使えるほか、浴槽に2~3滴たらせばヒノキ風呂に入っている気分を楽しめる。大野見地区で「田舎の農村の仕事をつくりたい」という信念で事業を手掛けている地元企業の高知精工が製造・販売。町は「売り方を少し変えれば、ものすごく売れるのではないか」と考え、マーケティングや営業面で協力している
他に、ヒノキオイルの抽出時に出てくる副産物のヒノキ水なども販売。消臭抗菌や害虫予防の効果があり、用途はさまざまで、使いやすいようスプレー式ボトルに詰められた商品もある。インターネット販売が中心で、ふるさと納税の返礼品としても扱っている
最近では、大阪市内の建築資材メーカーが町産ヒノキを手すりに採用。メーカーは「四万十の清流が育んだ四万十ヒノキの間伐材を利用。ヒノキのさわやかな香りが広がり、浴室にも使える」と「四万十」ブランドを前面に出して販売している。採用に大きく関わったのが、メーカー側の現場視察。伐採、製材、木材の乾燥といった町産材の流通に至る工程を見てもらった。農林課の植田恭平さんは「国産材供給に当たり、さまざまな苦労があることや、工夫をしながら、いろいろな人が関わっていることを認めていただけたら」と視察の意義を語る。視察したメーカーは「社会貢献にもつながるだろう」と町産材の使用を決めたという
また、木材に「節(ふし)」は付き物。植田さんは「加工品になると節はNGという話も多い。だが、実際に原木丸太や製材現場を見ていただくと、どう製材しても節は出ることなどを理解してもらえる。加工業者にとっては、木材の使い方、あるいは木材を使った今後の事業展開を考えるヒントにもなるのではないか
さらに新しいアイデアが出てくるかもしれない」と語る
四万十ヒノキのブランド確立をめぐっては、2011年、四万十川流域のヒノキ産地である四万十市、四万十町、中土佐町、三原村の4団体で「四万十ヒノキブランド化推進協議会」も設立。森林組合なども参加して議論を重ねている。四万十ヒノキは、香りの他、淡いピンクがかった木肌が特徴だが、「色が(他のヒノキと)違うというだけで攻めの材料になるわけではない」と植田さん。協議会の会合でも「四万十という名前だけで売れると思ったら、それほど甘いもんじゃない」と厳しい声が上がっている
中土佐町は、地方創生総合戦略にも町産材の利用促進と林業分野の雇用促進を掲げる。大野見出身の池田洋光町長も町産材の活用を進め、森林整備につなげる取り組みを重視している。町産材の都市部などへの供給拡大をめぐり植田さんは「山はたくさんあるが、人は少ない。加工技術に乏しいこともあり、近隣市町村の事業者さんとも連携して進める必要もあるという問題意識はある」と話している
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