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- ID:
- 35752
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0624
- 見出し:
- 巨樹をたずねて①~青葉の季節
- 新聞名:
- nippon.com
- 元URL:
- http://www.nippon.com/ja/views/b05301/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 巨樹の魅力南北に長い日本は、多種多様な巨樹が生育できる環境を持つ世界でも希有な国といえる
白神山地(青森県/秋田県)、屋久島(鹿児島県)の世界自然遺産登録(1993年)によって巨樹に注目が集まることとなり、その主役はなんといっても屋久島の縄文杉だった。巨樹と言えば縄文杉と言われるほど有名になり、日本を代表する巨樹に違いないとはいえ、縄文杉はその太さでは日本でようやく20番目にランクされる存在に過ぎない
日本国内においては、特にクスノキが大きくなる樹種として知られており、日本最大といわれる「蒲生の大クス」(鹿児島県)は、その幹周りなんと24メートル余り。根元に立ち巨大な樹冠を目の前にすると、その巨大さにしばし呆然とすることだろう。縄文杉よりも一回り、いや二回りほど大きいのだから納得だ
巨樹の定義についてだが、一般的には幹の太さで決まる。幹周りが3メートル以上に達したものを一般に巨木、5メートルを超えるものを巨樹と呼ぶことが多いようである。樹齢1000年の木があったとしても、樹高がいくら高くても、幹が十分に太くなければ巨樹とは呼べないのだ
日本で巨樹となる代表的な樹種は、スギ、クスノキ、ケヤキ、イチョウのほか、スダジイ、イチイガシ、カツラ、ナラ、マツ、ムクノキ、エドヒガンなど。アメリカの西海岸にはセコイアデンドロンと呼ばれる世界最大クラスの巨樹が林立するが、他の樹種が一緒に並び立つような森に出会うことはほとんどない。日本の場合には、同じ社寺の境内にスギやケヤキ、イチョウなど、数種類の巨樹を見ることも珍しくない。日本の温暖で湿潤な気候が豊富な種類の巨樹の生育を支えているのだ
巨樹は地球上の生命で最大、かつ最長寿の存在でもあり、当然人間の一生とはスケールが一桁も二桁も違うこととなり、そこに畏敬の念が生じる。一度その場所に根を張ると、一生その場で生きていかなければならない定めを負い、1000年を生きてきた巨樹であっても、周囲の環境が変化すれば瞬く間にその命を終わらせるはかない存在でもあることを忘れてはいけない
寂心さんのクス(熊本県)樹種:クスノキ(Cinnamomum camphora クスノキ科ニッケイ属)生息地:〒861-5531 熊本県熊本市北区北迫町618幹周:17.1m 樹高:30m 樹齢:伝承800年大きさ ★★★★★樹勢 ★★★★樹形 ★★★★★枝張り ★★★★★威厳 ★★★★★九州の中でも熊本県は「巨樹王国」とも呼べるような、多種多様な巨樹が見られる地である。その熊本を代表する巨樹が「寂心さんのクス」。大きさ、樹勢、樹形、枝張り、威厳、どれをとってもクスノキの中では一級品で、総合バランスでは間違いなく日本最高のクスノキであろう。1991年の台風19号、別名リンゴ台風によって相当数の枝を失うなどの被害を受けたが、旺盛な樹勢にも後押しされて現在ではほとんど傷も癒え、訪問するたびに葉の数が増えており、驚異的な生命力を見せつけてくれる
樹冠(幹から伸びる枝や葉を総合した部分)の広大さに関しては、もはや説明の必要もないほどの迫力で、樹下に憩う人の姿がまるで豆粒のように見えてくる
樹名の由来は、加藤清正(1562-1611)が熊本を治める以前、隈本城を中心に勢力を張っていた豪族「鹿子木親員入道寂心(かのこぎちかかずにゅうどうじゃくしん)」の墓があるためと伝えられる。今では、その墓石も旺盛な成長を続ける根に呑み込まれてしまった
かつてクスノキの周囲は一面の畑だったが、1989年より「ふるさと創生事業」によって「寂心緑地」と呼ばれる公園として整備が始まった。広い芝や満開のコスモス畑、どこからでも雄大な樹冠が見渡せる環境は見事というほかない。そしてその保護の手厚さからは、地元の方々のクスに対する思い入れが強烈に伝わってくる。訪問するごとに心を癒され、活力を分け与えてもらえる、そんな心の拠り所でもある
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