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- ID:
- 35261
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0411
- 見出し:
- 中国大使館 訪日観光客に花見の「注意事項」を発表
- 新聞名:
- livedoor
- 元URL:
- news.livedoor.com/article/detail/11400084/
- 写真:
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- 記事
- 訪日外国人が増える中、4月は桜の名所にも多くの外国人観光客が訪れている
ところが、よく問題になるのが花見のマナーだ。中国大使館(東京都)は今年、急増する中国人の観光客向けに初めて日本での花見に関する「注意事項」を発表。「他人の領地に踏み入らない」「樹を揺らして花びらを落とそうとしない」など、異例の注意喚起を行った。中国では2、3年前から、日本への旅行で花見を楽しむのがトレンドになっているといい、奈良市の「ホテルフジタ奈良」などを運営する「藤田観光」(東京都)はマナーや楽しみ方をわかりやすく解説した英語と中国語のリーフレットを作成。外国人観光客からは「わかりやすい」と好評の一方で、「ゴミを持ち帰るのは大変」といった声も聞かれた
日本への「桜ツアー」がブーム 中国共産党機関紙「人民日報」のニュースサイト「人民網」は平成26年4月、「『桜ツアー』が流行し始めている」との記事を掲載。爆買いや通常の観光だけでなく、春は各地で花見を楽しむ中国人旅行者が増えていることを伝えている
中国で訪日旅行を多く手掛けるオンライン旅行サイト「Ctrip」(上海)はこの季節、6泊7日で大阪、京都、奈良、東京を巡るパックツアーを「花見旅行」と銘打ち販売。訪問先には大阪城公園や京都・嵐山、奈良公園など、桜の名所がずらりと並んでいる
だが、昨シーズンは「桜の枝を折る」「トイレで用を足さない」「ゴミをポイ捨てする」といった迷惑行為が指摘され、中国人観光客を迎えた地域や自治体がその対処に追われたケースも目立った。こうした事態を受け、中国大使館は今年の花見シーズンを前にした3月24日、「花見に関する注意事項」を日本を訪れる中国人向けに発表した
そこでは日本の花見文化を紹介したうえで、「旅行客は他人の『領地』に踏み入らないこと」「日本人のように楽しみたいなら、適切な場所にシートを敷き、大声で騒がないこと」など、マナー順守を強調。他にも「桜の枝を折ったり、樹を揺らして花びらを落とそうとしない」、「写真撮影は現地の法律に従い、私有地などに立ち入らないこと」、「ゴミは指定の場所に捨てるか、持ち帰ること」と、細部にわたって注意を呼びかけている
「日本人は中国の桜を羨ましがり、花見文化を持ち帰った」 そんな中国で、最近喧伝(けんでん)されているのが「花見の起源は中国」説だ。中国桜花産業協会(広東省広州市)のサイトでは、「桜は中国のヒマラヤ山脈を原産とし、その後長江流域や台湾地区に伝わった」と、原産地であることを強調。さらに「唐代には諸国の使者が訪れる中、日本人は中国の桜植樹や観賞の文化を羨ましがり、茶道や剣道の文化とともに日本に花見の文化を持ち帰った」と記している
起源説でにぎやかなもう一つの国は、韓国だ。韓国メディアはソメイヨシノの原産地が韓国の済州島で、花見も韓国の文化だと主張。これが日韓のネットユーザー間で激論となっている
日本の花見は豊作祈願の行事や、奈良時代の貴族が中国から伝来した梅を観賞して歌を詠んだ「花見」が起源-との説がある。「日本後紀」には嵯峨天皇が弘仁3(812)年に神泉苑で「花宴の節」を催したとあり、これが確認できる花見の最初の記録とみられ、その歴史は古い。また、ソメイヨシノは江戸時代に人工交配で作られたもので、韓国の「原産地論」には無理があると言わざるを得ない
中国では社会問題に その中国では、訪日旅行者に対し中国大使館がクギを刺したように、花見のトラブルが数年前から問題になっている
広大な中国大陸は、寒帯から熱帯まで気候分布も幅広く、大都市を中心に花見の名所は少なくない。上海一の桜の名所ともいわれる「顧村公園」では、「芝生の上でピクニックを楽しむ観光客も少なくない」と、日本に似た花見の様子が地元のニュースサイト「東方網」で報じられている
ただ、「食事後、ゴミ箱が近くにあるのにポイ捨てする」、「樹木を故意に揺らす」といった観光客の行為に、公園関係者が頭を抱えている-というニュースも、3年前から報じられていた
今春も香港紙「明報」が、桜の枝を揺らして花びらの雨を降らせたり、桜の木に登って写真撮影する観光客について報道。中国でも花見の迷惑行為は社会問題として指摘されてはいるが、不届き者は後を絶たない
ただ、中国での花見は日本のスタイルとは少し異なるものもあるようだ。奈良を訪れた河南省のリ・ユエンチーさん(27)は「私の故郷やその周辺では、花見で飲食する人はあまり見かけない。花見酒などは日本独自の文化では」と指摘。香港の教師、デン・インシャンさん(29)も「そもそも、香港には日本のようにたくさん桜がない。花見といえば、写真撮影を楽しむこと」と話した
「日本はトイレもゴミ箱も少ない」!? 桜の季節の4月には、多くの観光客が訪れる奈良(26年は約415万人)。「ホテルフジタ奈良」(奈良市)では今春、「花見文化を外国人のお客さまに正しく伝えたい」と、英語と中国語で花見の文化やマナーを説明したリーフレットを配布している
リーフレットでは、花見を「日本の風物詩」とし、「飲酒禁止でないか確認すること。飲み過ぎ、騒ぎ過ぎに注意すること」「場所取りは必要最小限に」「写真撮影時は桜の枝を引っ張ったり、折ったりしない」「ゴミは持ち帰るか、分別して所定の場所に廃棄する」といったマナーを、イラスト付きで説明。トイレの問題についても、「トイレ以外の場所で用を足さない。トイレットペーパーは持ち帰らない」と明記している
リーフレットを見たフランス人のティム・ケリーさん(34)は「なぜその行為が禁止されているのか理由が明記され、イラストもあり分かりやすい」と評価。一方、内モンゴル出身で現在は日本に留学中の苑白露さん(26)は「日本は花見の名所に限らずゴミ箱が少ない。持ち帰らないといけないのは結構大変」と不満顔。「トイレも少なくて、いつも並んでいる」と話した
ただ、花見マナーが問題になるのは外国人だけではない。奈良公園室の担当者は「国によって習慣も違うだろうが、現地のルールに合わせてほしい。日本人も同様で、しっかりマナーを守ってほしい」と話す。実際、記者も枝垂れ桜の名所「氷室神社」(奈良市)で、桜の枝を引っ張って写真撮影する日本人カップルを見かけた
担当者は「『一観光客である自分の姿も見られている』という意識を持ち、お互い気持ちよく花見を楽しんでほしい」と話した。 (神田啓晴) 産経新聞
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