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- ID:
- 41051
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0319
- 見出し:
- 岡本太郎の熱 ここに 生命の樹
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- https://mainichi.jp/articles/20180317/org/00m/040/001000d
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 「人類の進歩と調和」をテーマに、約6422万人が未来社会への夢を体感した1970年大阪万博。そのシンボルで万博記念公園(大阪府吹田市)に今もそびえる「太陽の塔」が、48年を経て生まれ変わった。内部に立つ「生命の樹」に配された生物群のオブジェが「再生」され、岡本太郎が込めた情熱と思想を改めてうかがい知ることができる。19日からの一般公開に合わせ、概要を紹介する
「人間とは」突きつけ-再生プロジェクト指揮 平野暁臣さん 岡本太郎が「太陽の塔」を構想した原型は「生命の樹」。樹木という形とらせんによる動線です。だから、内部空間には岡本太郎の思想や情熱などすべてが詰まっているのです
これを現代にどう見せるのか。古いモノが壊れたから直す「修理」でも、全部作り替える「再創造」でもない。僕は、その間を取って「再生」を目指しました。基本構造はそのままに、照明など細部の演出、個々の生物造形の表情などは現代の最新技術を生かしました
生命の樹は、生物の進化の過程を視覚化したもの。アメーバなど原生生物の時代から始まり、上は我々の祖先、クロマニョン人の哺乳類で終わっています。「単細胞が下等で人間が一番上」と言いたかったわけではありません。むしろその逆。「足元を、生命の根源を見よ」と訴えている。だから階段(当時はエスカレーター)で下を見下ろせる構造にしています。太郎は、生命の樹全体が一つの生命体であり、太陽の塔の血流なのだと言いました
魚類や恐竜など、個々の生物造形は鑑賞者と目を合わせる向きに変えたり、手足や表情に躍動感を加えたりしました。その一方で、当時のままで残っていたゴリラは、半世紀近い時間経過を表すため、頭部に内蔵された電動モーターがむき出しのままで展示。最上部にいるのはクロマニョン人。なんと小さいことか。服を着た我々は立つことさえ許されなかったのです
48年前、この内部展示が来場者に理解されたとは思いません。高度成長期の当時、人々の関心はロボットや月の石、未来であり、足元なんて見向きもしなかった。でも今なら分かります。自分たちの足元を見直し、「人間とは何か」と向き合わざるを得ないことが。「太陽の塔」が仕事をするのはこれからな
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