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- ID:
- 40993
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0310
- 見出し:
- 樹木のささやき(3月10日)
- 新聞名:
- 福島民報
- 元URL:
- http://www.minpo.jp/news/detail/2018031049836
- 写真:
- なし
- 記事
- 決して声を出すことがない樹木でも、人に何かをささやくことはないだろうか。会津地方に住む年配の男性は最近「ある」と思える体験をした
自宅裏の杉の木の枝が伸び、倒れそうになった。やむなく伐採したのだが、切り口から見える年輪を何げなく数えて驚いた。樹齢がほぼ150年だったことが分かったからだ。偶然にも今年は戊辰戦争から150年という節目の年だ。会津戦争の頃、ご先祖さまがせっせと植えた木なのだろう
彼の家の近くにも西軍が迫ったらしい。命を落とした会津藩士を集落の墓地に埋葬したとも伝えられるが、彼はそれほど関心を持ったことはない。しかし、無縁だと思っていた幕末の動乱と当時生きていた先祖が、急に身近に感じられるようになった。杉の木がそっと結び付けてくれたように思えた
浜通りの幹線道路沿いには、震災と原発事故後、NPOが桜を植え続けている。子どもたちが帰還する時、世界に誇れる桜並木で迎えたいという願いが込められる。既に9千本近くになった。最終目標は2万本というが、それだけあれば、どれだけのことを語ってくれるだろうか。数十年後、桜並木のささやきを聞いてみたい
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