v10.0
- ID:
- 31112
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0812
- 見出し:
- 「板橋の木皮の能は医書にもれ」という江戸川柳が…
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/opinion/news/20140812k0000m070120000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 「板橋の木皮の能は医書にもれ」という江戸川柳がある。「板橋の木皮」とは中山道の板橋宿にあった縁切り榎の木の皮、「能」は効能のことである。昔、それを粉にして相手の男に飲ませると、その男との悪縁が切れるという俗信があった▲「黒焼と榎は縁のうらおもて」は、イモリの黒焼の粉を思い人にかけ
ると縁が結ばれるという俗信と榎を組み合わせた句だ。当時の中山道沿いに生えていたこの榎、結婚式の行列が避けて通っていたそうで、幕末に将軍家茂(いえもち)に嫁いだ皇女和宮の一行も迂回したという▲現在の縁切り榎は3代目だそうで、もちろん皮を取るのはご法度だが、今も縁切りを祈る人が訪れ
るのは悪縁に悩む人が絶えないからだろう。だがしつこいつきまといから暴力ざたに及びかねぬストーカー相手とあれば、神頼み、いや榎頼みですますわけにいかない▲昨年、警察が把握したストーカー件数は2万件を超え、集計開始以来最多となっている。先ごろ警察庁の有識者検討会は新たにLINEやツ
イッターなどを利用したつきまといも規制対象とする提言を行ったが、後手後手にまわる対策が何とももどかしい▲警察の対応を先回りしたかのような凶悪事件も目立つ今日、提言は状況次第で臨機応変につきまとい禁止を命令できる仕組み作りの検討を求めている。先手を打つという意味では、加害者の更
生や再犯の防止に向け医療機関や民間団体と連携した対策も課題とされた▲ストーカー事件の理不尽(りふじん)を見れば、加害者の病的な執着心をほぐす取り組みも必要だろう。黒焼も木の皮の霊力も通じない現代の「縁」の難所である。
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