v10.0
- ID:
- 29182
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 1207
- 見出し:
- 地方点描:リンゴの木
- 新聞名:
- 秋田魁新報
- 元URL:
- http://www.sakigake.jp/p/akita/chihou.jsp?kc=20131207ay
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 12月に入り、横手市のリンゴ農家は贈答用の発送作業に忙しい。赤く色づいたふじを一口いただく。甘さと酸味がジュワーッと広がり、たまらない。
1カ月ほど前、市内の農家でリンゴの収穫を手伝った。わずか1日ながら、気持ちの良い時間を過ごせた。翌日は午後から初雪となり、2日後の11月13日、横手市は積雪35センチを記録した。重く湿った雪は容赦ない。収穫前のリンゴの枝が裂けて大量の実が落果した。
2011年1月の大雪被害は記憶に新しく、生産は回復基調だっただけに、農家の落胆ぶりに心が痛んだ。初夏に取材した2人の若手を訪ねた。「ショックだけど前に進むしかない。しょげてる場合じゃない」「今は出荷が優先。少しでも手を動かした方がいい」。30代の彼らは力強かった。
県内最大のリンゴ産地は雪との闘いでもある。昭和49(1974)年1月13日付の本紙は、2メートル超の雪に埋まった枝を引き上げる農家を取り上げ、「四八豪雪」の被害を生々しく伝えた。当時について、リンゴ農家の泉康二さん(81)=増田町亀田=は「かなりの枝を傷めたが、回復力もすごい。リンゴ
の木って強いもんだなと仲間と励まし合った」と振り返る。
泉さんは剪定(せんてい)のプロとして名高い。生育環境や木の状態を見抜く目に秀でており、一目置かれる存在だ。「これが完成というのはない」と理想の樹形を追い求めてきた。先の初雪では大切にしてきた樹齢50年の老木が折れた。「泣きたくなるほど残念」と惜しむが、言葉を継いだ。「作るだけでなく
、商売っ気も必要」。しなり強いリンゴの木に似てたくましい。
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