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- ID:
- 28326
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0819
- 見出し:
- 日本のメガソーラー、送電網に問題点
- 新聞名:
- ナショナルジオグラフィック
- 元URL:
- http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130815003
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 日本では、昨年に施行された「再生可能エネルギー特別措置法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)」により、北海道を中心として太陽光発電所(メガソーラー)の建設がブームとなっており、中国やドイツを抜いて世界最大の太陽エネルギー市場に成長すると予想され
ている。
日本のメガソーラー、送電網に問題点
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しかし、その潜在的な発電能力を完全に活用するには問題がある。特別措置法で承認されたメガソーラーの4分の1は北海道を舞台としているが、現地の電力需要は国内全体の3%にも満たない。専門家は、北海道で発電した電力をニーズのある場所に送ることができるよう、送電システムの改革が必要だ
と主張している。
◆再生可能エネルギーへの転換
自国で化石燃料をほとんど生産できない日本は、原子力エネルギーの利用を進めてきたが、「2011年3月11日」を機に状況が変わる。ヨーロッパでクリーンエネルギーの普及に貢献した法律に倣い、電力会社に対して再生可能エネルギーを市場よりも高い固定価格で買い取るよう規定した「再生可能エネル
ギー特別措置法」が成立した。キロワット時あたり42円という電力価格は、東京の住宅用顧客の約2倍、アメリカ平均の約4倍に相当する。
昨年7月に施行されると、さまざまな業種の企業が太陽光発電事業に参入した。シャープなどの電子機器メーカーや三井物産などの商社をはじめとして、銀行や金融サービス会社が名乗りを上げ、携帯通信会社のソフトバンクも積極的に取り組んでいる。
固定価格買い取り制度(FIT)は、どのような形態の再生可能エネルギーにも適用されるが、経済産業省の統計によると、総計166万キロワットの日本の再生可能エネルギー容量のうち、90%以上が太陽エネルギーで占められる。メガソーラーは、風力や地熱に比べて時間もコストも少なくて済み、煩雑な環
境アセスメントも必要とされない。
日本の太陽光発電産業をまとめる業界団体である太陽光発電協会によると、太陽電池モジュールの国内出荷数は昨年に比べて271.3%増加しているという。
◆北海道に集中
しかし、このブームには懸念材料がある。北海道地域を担当する電力会社である北海道電力は4月、「メガソーラーの申し込みが、受け入れ限度の4倍に達した」と発表した。
特別措置法では、電力会社に対して、担当地域で発電された再生可能エネルギーをすべて送電システムに受け入れ、購入することを義務付けている。しかし例外条項として、電力供給の安定性を確保するという目的に限り、制限や拒否が認められている。既に容量オーバーを理由とした受け入れ拒否が発
生しており、「日本国内を10の地域に分け、10の電力会社が独占的かつ相互排他的に運営する現在の発送電システムには限界がある」との声が上がっている。
また、各電力会社は、停止中の原子力発電設備の再稼働を計画しており、太陽光発電の受け入れ拒否には将来の原子力分を確保する狙いもあると指摘されている。
◆世界最大の蓄電池
経済産業省では、メガソーラーの発電容量を北海道の送電システムに受け入れるため、296億円の予算を投じて北海道の南早来変電所に大型の蓄電池を設置。太陽光発電の電力流入を安定化させる計画を立てている。従来の2倍近い容量の6万キロワットという世界最大の蓄電池を設置することで、
北海道電力が受け入れ可能な電力容量が10%増加するという。
ソフトバンクのグループ会社で、再生可能エネルギー事業を担当するSBエナジーの取締役副社長、藤井宏明氏は、「送電システムの問題は電力会社だけの責任ではない」と話す。「エネルギー政策の方向性を政府が明確に示す必要がある。現状では、電力会社も発電事業者も身動きが取れない」。
自民党の安倍政権は、4月に「電力会社の発電事業と送電事業を切り離す発送電分離を早ければ2018年に実施する」ことを閣議決定した。しかし6月、安倍総理に対する問責決議可決の影響により、国会で承認されず廃案となった。秋には改正案が提出される見込みで、明確な方向性を打ち出せるか
注目が集まっている。
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