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- ID:
- 27934
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0619
- 見出し:
- 現場発・上州リポート:クマ樹木皮はぎ地域を行く
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/gunma/news/20130618ddlk10040217000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- ツキノワグマによる樹木の皮はぎ被害が急増している。県は被害対策として今年度からツキノワグマの捕獲を始めたが、効果は未知数。被害が最もひどいと言われる桐生・みどり地域の山林を訪ねた。【塩田彩】
みどり市東町に広がる16ヘクタールの山林。所有者の同町小中の坂本正幸さん(62)に案内され、車道から山の斜面を徒歩で10分ほど下った。「あれが新しく被害にあった木です」。坂本さんが指さす先には、幹の直径30センチほどのスギ。幹の周囲半分以上の樹皮が縦にはがされていた。むき出しの
白い木肌を触ってみると、しっとりと湿り気がある。クマの爪や歯の跡とみられる細かい筋がいくつもついていた。周囲は同様に地上1〜1・3メートルほどの高さまで皮をはがされた木が目立つ。
県によると、クマによる皮はぎの被害面積は、ここ10年で30倍と急増。2011年度の県内の民有林の被害面積は約83ヘクタール、被害総額は約2億9000万円にのぼる。原因として、個体数増加や、甘い樹液を求めて木の皮をはぐクマが増えたことなどを挙げるが、はっきりしたことは分からない。
県林業試験場によると、木は幹の周囲の樹皮をすべてはがされると赤く立ち枯れする。一部のみはがされた場合も、はがされた部分から内部が腐り出荷できない。同試験場の調査では、被害を受けた木のうち、3割が周囲をすべてはがされ、4割が2回以上被害を受けていたという。
坂本さんは「よく育ってそろそろ切り出そうかという木ほど狙われる」とため息をつく。苗木が成木になるまで数十年。子や孫に財産として引き継ぐ大木の中には100年をかけて育てるものもあるが、「たった一晩の皮はぎのせいで、数十年が無駄になってしまう」。林業の不況で、県産材の値はここ15年で3分
の1に下落。坂本さんは「後継者不足なのに、山が荒れれば後継者も現れない」と危機感を募らせている。
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