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- ID:
- 33320
- 年度:
- 2015
- 月日:
- 0619
- 見出し:
- 被爆樹木 児童書が道案内
- 新聞名:
- 読売新聞-
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/local/hiroshima/news/20150618-OYTNT50226.html?from=ycont_top_txt
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 映画監督・石田さん 写真や地図で親しみやすく
原爆の被害に耐えて焦土の中で生き続け、広島市民を勇気づけてきた被爆樹木を描いた児童書「広島の木に会いにいく」が偕成社(東京)から出版された。写真やイラストを使って親しみやすくする一方、専門家による最新の研究成果も盛り込んだ。執筆した映画監督の石田優子さん(36)は「本を読んで
、広島まで会いに行こうと思ってもらえたらうれしい」と話している。(中村隆)
石田さんが被爆樹木を知ったのは大学に通っていた20歳の時。平和記念公園にあるアオギリの前で、2011年に亡くなった語り部の沼田鈴子さんから「原爆で片足を失い、婚約者も亡くしたどん底から立ち上がれたのもアオギリに励まされたから」と聞き、感銘を受けた。
大学卒業後に映画制作会社に入った石田さんは、沼田さんの証言DVDの編集を担当したり、漫画「はだしのゲン」の作者で12年に亡くなった中沢啓治さんの歩みを描いたドキュメンタリー映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」の監督を務めたりするなど、広島に深く関わってきた。
再び、被爆樹木と向き合うことになったのは、沼田さんのDVD制作を通じて、広島市のNPO法人「ANT(アント)―Hiroshima」の渡部朋子代表(61)に出会ったことがきっかけだった。渡部さんは国内外に被爆樹木の種や苗を配り、平和の大切さを伝える活動を続けており、「子どもたちにも樹木について知って
ほしい」と願っていたことから、児童向けの作品を作ろうと考えたという。
本来は映像が専門だが、子どもには本の方が身近だと思い、大学時代の知人で偕成社の小宮山いつかさん(35)に相談。11年に出版が決まり、本格的な取材が始まった。
現地では樹木医の堀口力さん(70)の案内で、四季折々の被爆樹木を観察。広島城では爆心地と反対側の根がよく張っているクロガネモチと出会い、比治山の山陽文徳殿では枯死の危機が迫り、堀口さんが必死に治療を続けるソメイヨシノも目にした。
また、筑波大の鈴木雅和教授を訪ね、被爆樹木は幹の爆心地側がより大きなダメージを受け、反対側より成長が妨げられているため、木全体が爆心地側に傾いていると考えられることなどを取材し、図も交えて解説。巻末には紹介した被爆樹木の写真と簡単な解説を付けた地図も添え、本を手にいつでも
樹木に会いに行けるようにした。
本は完成したが、石田さんは今も広島に通い、被爆樹木の発する厳かな雰囲気や枝葉の音などをビデオで撮影している。来年夏をめどに90分のドキュメンタリー映画として完成させる予定で、「これからもライフワークとして被爆樹木の取材を続けたい」と話している。
「広島の木に会いにいく」はA5判で239ページ。税抜き1800円。全国の主要書店で販売中。問い合わせは偕成社(03・3260・3221)。
【被爆樹木】 樹勢の衰えや、戦後の復興事業などのため、減少しているとして、広島市が1996年に、爆心地から約2キロ以内で原爆投下前から残る木を対象に指定を開始。腐敗した根を取り除き、腐葉土や肥料で土壌改良するなどして保護を進め、現在、市内56か所に約170本が残っている。
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