英文を作成する際、日本語特有の表現に固執すると、分かりやすく簡潔な英語はなかなか書けません。明確に(Clear)かつ簡潔に(Concise)に書くために、日本語から英語への変換を順を追って見てみましょう。
「木材は、湿っている時と乾いている時では、後者の方がよく燃える。」
まず、この文章を機械翻訳ソフトウエアにかけてみました。
Wood, when it is dry and it is wet, the latter burns well.
この英文を、技術英語のテクニックを使ってどれだけスマートにできるでしょうか。
初めに考えるのは、文章の核です。この例では「木材は、燃える」です。ここに、条件や程度、比較を表す修飾語句を付けていきます。
1) Wood burns.
「木材は燃える」
2) Wood burns well.
「木材はよく燃える」
3) Wood does not burn well.
「木材はよく燃えない」
4) Wood burns well when it is dry.
「木材は乾いている時よく燃える」
5) Wood does not burn well when it is wet.
「木材は湿っている時よく燃えない」
6) Wood burns better when it is dry than when it is wet.
「木材は湿っている時よりも乾いている時の方がよく燃える」
以上の1)から6)の順で、英訳がひとまず完成しました。
もとの和文にある「後者の方が」という言葉は、6)の比較級「A than B/BよりもA」で表現されていますので、始めに示した機械翻訳の「後者/the latter」という単語は不要だったことが分かります。
ごく短い文章であっても、英語を翻訳するとき、いきなり日本語の字句を追ってはいけません。
次に、できあがった6)の英文だけを眺めてみましょう。すると、和文の「湿っている時」「乾いている時」に引きずられたwhen~の繰り返しが冗長に感じます。もとの日本語から離れて「wet wood」「dry wood」と表現を変えれば、
Dry wood burns better than wet wood.
「湿った木材より、乾いた木材の方がよく燃える」
と7語で書き換えることができます。
さらに、和文の主旨が「乾いた木材と湿った木材の対比」に無く、「木材は乾燥している方がよく燃える」ことが伝わればよいのであれば、
Drier wood burns better.
とたった4語に凝縮することも可能です。ここまでいくと、今の機械翻訳の技術ではムリでしょう。何を伝えたいかをよく考え、発想の転換を試みることも一つの手です。