v10.0
- ID:
-
32060
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 1123
- 見出し:
- 余録:「日本一の大イチョウを見てきた」という知人の…
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/opinion/news/20141123k0000m070082000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 「日本一の大イチョウを見てきた」という知人の自慢話を聞いた。青森県深浦町の「北金ケ沢のイチョウ」だ。写真を見せてもらうと全体がこんもりと黄色く色づき確かに見事。看板によると樹齢1000年。環境省の調査を基にした全国巨樹トップ20でも堂々3位にランクされている▲青森に限らず大イチョウは
全国各地に分布している。日本人には昔からなじみの深い植物だが、かつて欧州では絶滅した植物だと思われていた。17世紀に長崎に滞在したドイツ人医師ケンペルが「廻国奇観」の中で日本のイチョウを紹介。この図を基に植物学者リンネが学名(Ginkgo biloba)を付けたといわれる▲地球上でイチョウが
最も栄えた時代は、恐竜が闊歩したジュラ紀。その後衰退し、一時は中国を残して地球上から姿を消した。日本へはその後、中国から伝わったらしい▲太古の昔から生き続けてきたためか、その生殖も独特だ。雌雄異株で、裸子植物なのに精子を持つ。花粉が風に運ばれて雌花に達すると、卵に向かって泳
ぎ受精する。明治時代に植物学者、平瀬作五郎が観察した重要な発見だ▲見た目も美しく、日本とのゆかりも深い。日本人好みの樹木だと思っていたら、並木道などでギンナンのにおいに苦情が相次いでいると知って驚いた。自治体職員が苦慮しているというが、貴重な秋の味覚として大目にみてやってはどう
だろうか▲最盛期には複数の種があったものの、絶滅寸前までいったため現在のイチョウは1目1科1属1種。はるかな時を生き抜いてきたその運命を思いつつ、この連休は近所のイチョウを見上げてみたい。
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