v10.0
- ID:
- 26869
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0218
- 見出し:
- ピーピングしのすけのふしあなから世間:富山発の「無花粉杉」
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20130215ddlk13070255000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- さあ、やってきましたよ、花粉症の季節が。
この時期になると私はつくづく、まだ花粉症を発症していないことに感謝するばかりです。
くしゃみ、鼻水、目のかゆみでつらそうな人を横目に、もし私が花粉症になったら落語どころではないだろうと戦々恐々。
予防として、早くから注射を打ったり、錠剤を飲み続けたり、という話も聞きますが、国民の5人に1人が苦しんでいると言いますから、立派な国民病です。
花粉を避けるグッズや方法がマスコミでも頻繁に流されていますが、決定打はありません。
そんな中、私の故郷、富山県人がついに花粉症との闘いに近い将来終止符を打つべく開発した「無花粉杉」のニュースを見ました。
20年前に偶然発見された、花粉を飛ばさない1本の杉の種子を使って大量生産する技術を開発したのは、富山県森林研究所研究員で農学博士の斉藤真己さん。
20年前、大学院で共同研究が始まったのですが、斉藤さんは卒業、就職後も杉の研究に没頭、全国各地から優良品種の花粉330品種を取り寄せ、1種ずつ無花粉杉と交配させ、9年後についに「無花粉になる遺伝子」を持つ品種を発見。当初は学会も「たった1本じゃあね」と相手にしてくれなかったそう
ですが、「いまやり続けなければなにも変わらない。杉が年輪を重ねるように私も一歩一歩……」と地道な作業。ここが実に富山県民らしいところです。
「50年後に、昔は花粉症というものがあって大変だったらしいよ」と言えるようになることを目指す斉藤さん。
富山自慢の「呉羽梨」の冷凍技術にしろ、ノーベル賞受賞の田中耕一さんにしろ、コツコツ精神の成果です。
なんでこういうタイプが多いのかなと思えば、富山県は日本で一番住みやすい県、持ち家率ナンバー1、おいしい空気に、海があって川があって山がある抜群の立地。そこからとれる新鮮で豊かな食材。
こんな恵まれた環境で生まれ育っているからこそ、まだ見ぬ未来をめざしてコツコツした作業ができるのでしょう。
脇目も振らず一歩一歩進んでいく気力は、富山の豊かさに支えられているのです。と、手前みそになりましたが、50年後、花粉症がほんとになくなることを祈りつつ、できれば一日も早くよい薬ができますように。
..