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- ID:
- 23099
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0106
- 見出し:
- 3・11から明日へ:2012エネルギー革命・北陸/4 まきボイラーの開発
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/ishikawa/news/20120105ddlk17040420000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 間伐材利用で林業振興も
まきボイラーと太陽熱温水器を組み合わせた複合型の給湯設備の開発が、福井県内で進んでいる。その名も「マキキュート」。電気やガスの代わりになるだけでなく、森林が多い地域の間伐材を有効活用し、林業の復活も目指す取り組みだ。今春をめどに販売が始まる。【柳楽未来】
◆強力な火力に着目
原発3基を抱える同県美浜町。その山中で自然体験活動などを企画する「森と暮らすどんぐり倶楽部(くらぶ)」代表の松下照幸さん(63)は約10年前から、まきストーブの強力な火力に着目していた。活動拠点のログハウスにあるまきストーブ。その上で湯を沸かすと、ぐつぐつと煮えたぎる。「すごい熱量だ
。これはきっと強力なエネルギー源になるぞ」
約2年前、松下さんは同県池田町の機械設計会社「JASTY」社長、山口昌英さん(57)と知り合い、給湯設備の開発を持ちかけた。山口さんは大手自動車メーカーの元技術者で、現在はまきやペレットを燃料とするストーブなどの設計を手がける。池田町は面積の9割以上を森林が占めるが、安価な輸
入木材の影響などで林業は厳しい状況が続いている。「森林を使わないと地域は活性化しない」。山口さんは二つ返事で引き受けた。
◆低価格目指し
2人はまず、外国製品を研究した。センサーを駆使したドイツやイタリアの製品の完成度の高さに驚いたが、価格は数百万円もする。
「これでは日本で普及しない。価格は100万円以下。ローテクを意識して作ろう」と2人は決めた。安ければ手軽に買ってもらえる。簡単な設計にすれば、地域の工務店が製作でき、新たな産業も生み出せる。
設計を何度もやり直し、価格を100万円程度に抑えた。ボイラーの大きさは高さ約1・6メートル、幅と奥行き各約60センチ。まきをくべる燃焼室を囲むように150リットルの水を入れたタンクがあり、タンク内を通る細管に水を流せば、お湯になって出てくる仕組みだ。同県南部ではどんぐり倶楽部がまきを配
達しており、1束(約500円)で数時間の暖房や給湯が可能という。
太陽熱温水器を併設し、夏は太陽エネルギーを活用することにした。現在、試作のまきボイラーで足湯体験会などを開き、使い勝手を確認している。
松下さんは「エネルギーといったら電気ばかり議論になるが、まきを利用してエネルギーをうまく使っていければいい」。山口さんも「まきの給湯システムは、少し手間はかかるが楽しみがある。地域でエネルギー循環をしていきたい」と意気込んでいる。
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