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- ID:
- 26187
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1213
- 見出し:
- 食痕生かしたブランド戦略
- 新聞名:
- 産経新聞
- 元URL:
- http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121212/mca1212122240012-n1.htm
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 三重県「あかね材」
■本格的な利用期に日本の森林の現状
日本の国土面積3729万ヘクタールのうち、森林は6割以上を占めている。このうち私有林が6割、国有林が3割以上を占めている。また天然林は6割、人工林は4割という構成比になっている。
人工林の面積は1035万ヘクタール(2007年)で、スギが450万ヘクタールで最も多く、人工林面積の43%を占めている。続いてヒノキの260万ヘクタール(25%)と続く。
森林の蓄積量は毎年増加しており、総蓄積量は約44億立法メートルに及ぶ。人工林の樹齢は41~45年のものが6割以上を占めており、今後は本格的に利用が可能な時期に入る。
二酸化炭素(CO2)の吸収源となる健全な森を育成するために、今後は国産材の需要の創出、林業の振興が大きな課題となる。
◆3.5%の確保へ
日本は2012年までにCO2の排出量を1990年の水準より6%削減することを目標に取り組んできた。その6%のうち3.8%(1300万炭素トン/年)は、日本国内の森林によるCO2の吸収量を増やすことで達成するという。その確保に向けて林野庁では、07年から6年間で330万ヘクタール(年間55万
ヘクタール)の間伐等に取り組んでおり、これまでのところ目標達成が可能な水準で推移している。
13年以降も日本は気候変動枠組み条約締結国の一員として、第2約束期間における森林吸収量の上限として国際的に合意されている3.5%の確保に向け最大限努力する方針だ。
◆厳しい林業
2010年の林業産出額は、ピーク時(1980年)の36%。このほとんどが木材生産の減少によるもので、日本の林内路網密度も諸外国と比べ低位となっている。
林野庁がこのほど発表した「森林・林業・木材産業の現状と課題」によると、日本の森林の保有形態は、保有山林面積が小さい所有者が多数を占める構造になっており、小規模な森林所有者の森林施業および林業経営に対する意欲は低いという。植林から伐採まで長期にわたり多大な労力・経費を要
するため、採算性も悪化している。
林業の生産性を向上させるには、施業の集約化や路網の整備、高性能林業機械の導入による伐採搬出コストの削減など、大きなロットで安定的に原木を供給できる構造を構築することが必要となる。
このため、11年の森林法改正により創設した、面的まとまりのある森林を対象に施業集約化や路網整備を進める森林経営計画制度の普及・定着が課題になっている。
規模拡大等の目標を記載した「森林経営計画」の認定を受けた林家について、一定の要件の下で相続税の納税を一部猶予したり、林業用機械・施設等の取得・保有等に対する金融措置および税制上の優遇措置等により、高性能林業機械の導入等を図るなど、効率的で安定的な林業経営に向けた取
り組みの支援も行われている。
地球温暖化の影響によってスギノアカネトラカミキリなどの虫食いが広がり、スギやヒノキの放置林が全国各地で増えている。三重県木材協同組合連合会は、害虫による食痕材を逆にブランディングに生かし、「あかね材」として利用促進を図っている。
スギノアカネトラカミキリなどの食痕部は地元では「アリクイ」と呼ばれ、買いたたかれたり、チップ材として売り払われていた。
さらに、価格が安く、伐採や運送コストに見合わないため放置林が増えていった。「これをなんとか流通させようと考えたのが、あかね材」と、あかね材連絡協議会推進部長の久保敦子さんは話す。
◆逆転の発想
三重県の松阪地区木材協同組合は2009年、それまで負の特徴だった虫食いを逆転の発想で利用して「あかね材」というエコブランドを立ち上げた。
「最初は『アリクイ』の木材を使用するのは恥ずかしいとプライドが許さなかった」(久保さん)という木材業者も、環境問題への関心の高まりとともに理解してくれるところが増えた。公募で決まったマスコットキャラクター「あかねちゃん」も戦列に加わり、10年には同連合会と関係行政機関による「あかね材認証
機構」が立ち上がり、本格的な活動が始まった。現在、あかね材の認証製材工場は県内で約60件に上る。
◆全国へ展開
「あかね材は科学的にも強度が実証されています。無農薬(だからこそ虫が付く)野菜と同じような感覚で考えたらいいでしょう」と久保さんは話す。
「あかね材」は、虫食いの大きさによって、JASの節の考え方に準拠した4段階の等級区分(AA~C等級)が設けられている。その認定は、資格を持った選別士が行う。
11年に策定された国の「森林・林業基本計画」に「あかね材」の利用促進が盛り込まれ、同年12月に「あかね材連絡協議会」が発足、全国に輪が広がっている。また、学校でも「あかね学級」を開催して、環境学習に取り組んでいる。
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