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- ID:
- 26084
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1205
- 見出し:
- 20億枚の葉を持つ「大統領」という巨木
- 新聞名:
- 日経BP
- 元URL:
- http://wol.nikkeibp.co.jp/article/trend/20121129/140621/?ref=top-shin&rt=nocnt
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 米国カリフォルニア州の内陸部に横たわるシエラネバダ山脈。その南部、標高約2100メートルの高地に広がるセコイア国立公園の斜面に、1本の巨大な木がそびえている。
樹皮が何層も重なる赤さび色の幹は、根元で直径8メートルもある。見上げれば首を痛めてしまいそうなその大きさに、今から約90年前、人々は畏敬の念を込めて「プレジデント(大統領)」という名をつけた。プレジデントは米国を代表する巨木、ジャイアントセコイア(和名はセコイアオスギ)だ。
カリフォルニア州立ハンボルト大学に在籍する森林学研究の第一人者スティーブ・シレットは、これまでに数多くのジャイアントセコイアを調査してきた。今回、シレット率いる調査隊は、米国立公園局の賛同と許可を得てプレジデントに登攀、巨木の驚くべき素顔を明らかにした。
これまでに測定された巨木のなかで、プレジデントは世界で2番目に大きいことを確認した。高さこそ同州沿岸部に分布するレッドウッドやオーストラリアのセイタカユーカリに劣るが、木全体の体積はずっと大きい。
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ジャイアントセコイアは高地の寒冷な気候や豪雪、落雷に耐えながら太くたくましく成長する。「プレジデント」と呼ばれるこの木は世界中でこれまで測定された木のなかで、2番目の大きさを誇る。(Michael Nichols/National Geographic)
山火事さえ“好都合”な巨木
幹の頂部は雷に打たれて枯れているものの、樹高は75メートル。4本の大枝は、それぞれがちょっとした大木の幹ほどの太さがあり、主幹全体の中ほどの高さから突き出して、こんもりとした樹冠を形成している。ジャイアントセコイアで最大と言われる「シャーマン将軍の木」の方が幹は太いが、樹冠の大きさ
はプレジデントが勝り、葉の数は20億枚近くもある。
樹木は、日光や水をめぐって周囲の木々と競争し、より高く、より外へと伸びていく。空と大地から必要な養分とエネルギーを絶えず受けられる環境にあれば、樹木は巨木となった後でも成長を続けることが可能だ。ジャイアントセコイアは、途方もない長い年月を生きてきたからこそ巨大になったのだ。
ジャイアントセコイアが長寿なのは、普通の木なら死に至ってもおかしくないような脅威をことごとく切り抜けられるからだ。非常に強靭なため強風で倒れることもなく、心材や樹皮にはタンニン酸などの化学物質が含まれているので、微生物による腐食もない。巣穴を掘るキクイムシなど痛くもかゆくもないし、厚い樹
皮は火事にも強い。
むしろ山火事は好都合で、競争相手が焼き払われ、火の熱によってセコイアの球果が開いて種子が散らばる。そして、存分に日光を浴びながら、燃えた植物の灰で養分が増した土壌で芽を出すのだ。高い成木に雷が落ちることはあっても、それが原因で枯死することはまずない。
セコイアはこうして数千年にわたり成長を続けてきたのだ。
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