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- ID:
- 25825
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1107
- 見出し:
- 無農薬リンゴ結実 転業3年、羽咋の平さん
- 新聞名:
- 北国新聞
- 元URL:
- http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20121107102.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 日本一の精度と言われた鍛造リングの製造を退き、農林業を始めた羽咋市上白瀬町の平 昭七さん(80)が、リンゴの無農薬栽培に成功した。虫が付きやすいリンゴを無農薬で 栽培するのは無謀との専門家の見方を覆し、今年は5千個を収穫する見込み。「今の農業
は自然を壊すことばっかりやっとる。何百年か前の土に近づけたい」。土づくりからこだ わり抜いた平さんの執念は、赤い果実となって実を結んだ。
19歳で鍛造の世界に入った平さんは1968(昭和43)年に羽咋で平鍛造を創業。 業界で「奇跡的」と称された精度を武器に、ベアリング(軸受け)・建機用鍛造リングの 製造で国内トップシェアを誇った。その平さんが「平農林」を設立し、リンゴやモモ、ブ ドウの栽培を始めたのは2009年のことだった。
平さんは無農薬にこだわった。自分が所有する山林から切り出した広葉樹を砕いてチッ プにし、木の葉に見立てて羽咋市三ツ屋町のリンゴ園に敷き詰めた。木の生命力を引き出 すため、土づくりに精魂を傾け、土と水の温度管理を徹底した。
青森県のリンゴ農家木村秋則さんの自然栽培が脚光を浴びるまで、リンゴ栽培には年に 10~12回の農薬散布が必要というのが常識だった。リンゴ栽培に詳しい旧石川県農業 総合研究センター所長の野畠重典さんは「リンゴの栽培は果実の中でも難しい。無農薬で
やろうというのは無謀で、できるはずがないというのがこれまでの考え方だった。それを わずか数年でやり遂げるとは」と、平さんの仕事に舌を巻く。
平さんは今年9月に収穫した「つがる」と栽培した土壌の検査を、リンゴ栽培の本場青 森市の社団法人青森県薬剤師会衛生検査センターに依頼。同センターがリンゴの成分61 項目、土壌224項目を調べた結果、いずれも農薬は検出されず、平さんのリンゴは安全 ・安心のお墨付きを得た。
9月から収穫してきた「つがる」は市場に出すにはまだ足りず、地元の小中学校や高齢 者施設などに無料で配り、喜ばれている。「誰にもできん技術を確立したいんや」。リン グの鬼はリンゴの鬼となり、無農薬栽培に情熱を燃やしている。
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