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- ID:
- 24932
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0801
- 見出し:
- 英国から来た 巨木の仕事人
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000001208010001
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 欧米で確立した「アーボリスト」と呼ばれるロープを駆使して巨木の枝切りなどをする樹上作業者の英国人、ポール・ポインターさん(35)が、日本での活躍の場を求め、昨年11月から紀北町海山区島勝浦で暮らしている。林業が盛んな東紀州地域で7月8日、傷んだ巨木の枝切り作業に初めて挑んだ。
アーボリストは、自然との共存をめざし、周辺に危害をもたらしそうな弱った巨木の悪い部分を切るのが主な仕事だ。
イングランド出身で服飾デザイナーだったポインターさんは2005年、アーボリストに魅せられて転身した。「海に囲まれ、東紀州地域に似た気候」というウェールズ南西部ペンブルックシャー州で修業して、専門の国際資格(ISA)を取得。これまでに高さ25メートルもある朽ちかけた老木の枝切りをするなど経
験を積んできたという。
樹木医と林業・造園業の技能を兼ね備え、ロープを使って素早く木に登り広範囲に移動できる技術がある。クレーン車やはしごが届かない山奥の巨木や、木の下に社寺などがある大事な場所での枝切りに有効で、幹を一切傷付けず、周りに痕跡を残さないのが特徴という。
日本にも広がりつつあるが、ポインターさんは「これだけ多くの山林があるのに、アーボリストが少ないことが不思議だ」と話す。
今回の作業は、尾鷲市街地の中村山(標高49メートル)中腹にある高さ12メートル、推定樹齢50年のクリの巨木を枝切りした。木は樹形が乱れ大きな枝が強風で折れるなど、ふもとにある民家に危害を及ぼし始めていた。直下にあるアシタバ群生を守るのも任務だった。
多くの住民が見守る中、作業を終えたポインターさんは「思ったより簡単だった。ただ、枝を落とす場所が限られたため、それには気を遣った」。依頼した土地所有者の平山浩介さん(60)は「丸坊主になると思ったが、風景と溶け込んでいい感じ。これで安心」とホッとした表情だった。
ポインターさんは現在、英国の美術大学で知り合った妻すみれさん(38)の実家で生活しながら、主に奈良県や長野県に出向き、枝切り作業や林業関係者らに木登りや専用道具の使い方を指導している。
東紀州地域について「山がいっぱいあって、車ですぐにワイルドな場所に行ける。とても興味深い」と話した。「日本人は追究することが得意。これから、この技術を持った人が多く生まれるだろう」とアーボリストの普及に期待している。
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