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- ID:
- 登録が決まったのは綾町全域と宮崎県小林、西都市、国富町、西米良村の一部計1万4580ヘクタール。カシやシイなどの天然の照葉樹林が約2300ヘクタール広がり、周辺では環境に配慮した有機野菜が栽培されている。
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- 年:
- 2012
- 月日:
- 0713
- 見出し:
- 樹齢200年の尾州檜を使ったシャープな口縁のシャンパンクーラー
- 新聞名:
- 日経トレンディ
- 元URL:
- http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120711/1041900/?ttr_img
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 中川木工芸は、京都の老舗桶屋「たる源」で修業を積んだ祖父・中川亀一氏が京都白川に工房を構えたのが始まりである。2代目である父の清司氏が白川の工房を受け継ぎ、3代目の周士氏は滋賀県の比良に工房を開いた。
水のしずくをモチーフにした『Shizuku(しずく)』。保温性が高く、水滴が側面につかないという機能性にも優れた逸品。実勢価格は6万8250円
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1カ所たりとも同じ角度のところはない
3代にわたり受け継がれてきた伝統の技は、3代目・中川周士氏の手により、新たな分野へ大きく飛躍しようとしている。その代表的な作品がシャンパンクーラーだ。『Konoha(このは)』と名付けられたシャンパンクーラーは、従来の常識を覆す、木葉形の優美なフォルムとシャープな口縁を持つ木桶である。そ
の形状の美しさをフランスの高級シャンパンブランド「ドン ペリニヨン」の担当者が絶賛。2010年に同ブランドのシャンパンクーラーとして世界に向けて販売された。
「木桶は保温性が高いため、氷が溶けにくく、冷たさが長続きします。結露もつかないので、下に布を引かなくても使えるなど、寿司店のカウンターなどでも重宝されています。また、檜の香りが使う者の心を癒してくれる。木桶には、木や水と深く関わってきた日本人の知恵と工夫が詰まっているのです」(中川
氏)
中川木工芸・3代目の中川周士氏。中川木工芸は、京都白川が始まり。3代目の周士氏が滋賀県の比良に工房を開いた
2011年には、『Konoha(このは)』に続く新たなシャンパンクーラーとして、水のしずくをモチーフにした『Shizuku(しずく)』を発表した。部材に使われているのは、尾張徳川家の御用材として手厚く保護されてきた樹齢200年を超える尾州檜を使用。上質な檜が持つ温かみある手触りや木目の美しさが独特の気品
を醸し出している。上質な和木(日本の木)が持つ素材を引き出し、その気品を損なうことなく製品に仕上げていくために、職人は丹念に木と向き合い続ける。
時を超えて、職人から職人へと受け継がれていく技。日本人が愛した木桶は、中川氏ら若手職人たちの手により現代的な製品に姿を変え、これからも愛用され続ける。
材料は樹齢200年を超える尾州檜
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「まずは、木を寸法通りに繊維に沿ってそぎ割り、その後、○(せん)という刀で丁寧に削っていくのですが、美しい形の桶に仕上げるためには、1カ所たりとも同じ角度のところはなく、じつに細かい作業が必要となります。もちろん、金属の釘は使いません。『指物』という木工の技を使い、木と木を組み合わせて
いくことになります」(中川氏)
『Shizuku(しずく)』の特徴である口の先端は、「○(せん)」という刀で丁寧に削っていく。職人の勘だけが頼り
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工房には200丁を超えるカンナが並んでいる。親指大の小さなものから、素人では使い方が想像できないような不思議な形状をしたカンナまで、場所によって使い分け、丁寧に桶の形を整えていくのだという。
工房内に並ぶカンナは、200以上にものぼる
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使い込むことでさらに独特の風合いが生まれる
かつて木桶は、日本人の日常生活に欠かせないものだった。しかし、次第に木桶を用いることが減り、桶をつくる職人の数もわずかとなった。中川氏のもとには、今も年季の入った数百年ものの桶の修理が持ち込まれる。
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「木桶は、一部が破損しても、側板の一部を差し替えることで再生が可能です。大量生産の品と比べて高価ですが、壊れても職人の手によって修理することで長く使うことができる。使い込めば込むほど、さらに味わい深い表情になるのが木桶の魅力です。数百年前の桶を修理していると、当時の職人さんと
会話しているような気になります」(中川氏)
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