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- ID:
- 24593
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0620
- 見出し:
- ミャンマー、基幹産業で民間開放 大統領が表明
- 新聞名:
- 日本経済新聞
- 元URL:
- http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM19057_Z10C12A6FF2000/
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- ミャンマーのテイン・セイン大統領は19日、首都ネピドーで経済分野の施政方針について演説した。通信や電力など国営企業が独占してきた基幹産業への民間参入を認めると表明。外資を含む民間資本を活用して財政再建と経済成長を推進し、2015年度までに国民1人当たり国内総生産(GDP)を3倍に
引き上げる目標を示した。ただインフラ整備は遅れており、外資誘致や経済成長に向けて多くの課題が残っている。
11年3月末に就任した大統領は「政治改革と国内和平に向けた取り組みを迅速に進めた」と1年目の成果を強調。「今後は改革の第2段階として経済発展と国民生活の向上に取り組む」と強調した。
国家の財政赤字について「11年度は2兆1595億チャット(約2200億円)、12年度見通しは1兆9537億チャットに上る」と述べ、初めて政府として財政赤字額を公表。「非効率な政府投資を削減し、各産業を活性化させる」と力説した。通信・電力のほか林業、教育、医療、金融の各分野で民間企業への開放
を進めると表明した。
一連の経済改革目標を数字で示すため、近く15年度までの経済計画を国会に提出すると言明。具体的には年率7.7%の成長目標を掲げ、15年度の1人当たりGDPは3倍に引き上げるとの計画を示した。
4月の国際通貨基金(IMF)の推計によると11年のミャンマーの1人当たりGDPは832ドル(約6万6000円)。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国の最下位にとどまり、首位のシンガポール(4万9271ドル)に比べて約60分の1と大きな格差がある。
ASEANは15年に経済共同体を発足、後発加盟国のミャンマーも人口6億人の統一市場に組み込まれる。非効率な国有企業を温存したままでは、国内市場が輸入産品に席巻されかねない。外資呼び込みや民間資本の育成を図り、競争力を強化して経済成長を目指す。
ただ、5月後半に停電に怒った市民が政府への抗議集会を開くなど、電力不足は依然深刻な状況が続く。12%にとどまる道路舗装率(日本は80%)や通信事情の悪さなど、インフラ整備の遅れは外資誘致と経済成長のハードルとなっている。
旧軍事政権時代に成長した「政商」の不透明な権益を廃し、経済発展の果実を一般国民に広く行き渡らせられるかも課題となる。
テイン・セイン政権は民主化改革と並行し、経済発展の妨げとなる前近代的な経済制度の改革に着手した。昨年10月に民間銀行に外国為替業務への参入を認め、今年4月から不透明な多重為替レートを廃止。実勢レートに一本化し、経済安定のため1日の変動幅を一定範囲内に抑える「管理変動相
場制」に移行した。
国会は7月上旬に再開し、1988年制定の「外国投資法」を24年ぶりに改正する法案を承認する見通し。外資企業への法人税免税期間の延長や、現在は禁じている民間からの土地利用権取得を認めるなど、外資導入の環境を整える。
ミャンマーは民主化改革に伴い、豊富な天然資源や低コストの生産拠点、人口6200万人を抱える潜在的な巨大消費市場として注目が集まっている。欧米は民主化を後押しするため、自国企業によるミャンマーへの新規投資禁止など、90年代から科してきた経済制裁の一時停止措置を決定。日本も25年
ぶりの円借款再開を表明するなど、外資進出の動きが活発になっている。
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