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- ID:
- 51944
- 年度
- 2011
- 月日:
- 1020
- 見出し:
- 妖精人形で安らぎを 立川で展示会
- 新聞・サイト名:
- 新建ハウジング
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000001110190001
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 40年間、人形を制作してきた造形作家が「妖精」をテーマにした展示会を立川市で開いている。ある時は子ども向けの人形劇に、ある時は映画など商業向けに、様々な人形を手がけてきた。仕事に忙殺される中、「自由な発想力」を失いかけている自分に気づき、気持ちを素直に表現しようと考え続けた結果
、妖精にたどり着いたという。
小平市に住む吉川潔さん(63)。高校時代に絵本向けの挿絵を描き始め、慶応大学卒業後に絵本の読み聞かせをする財団に入った。1974年から2年間、人形劇の盛んな旧チェコスロバキアに留学。人形や舞台の設計、制作技術を学んだ。
帰国後は財団に戻り、指や棒の動きで操る人形を作った。大型バスを改造した「移動図書館」で都内の保育園や団地を回った。吉川さんが作った、童話や民話のキャラクターが動き回っては「泥棒はどっちに行った?」などと語りかけると、子どもたちから「あっち、あっち」と声が返ってくる。黙り込んでいた障害
のある子の表情がみるみる明るくなった。「人形には人の心の奥底を揺さぶる力がある」と思った。]
89年に人形美術を手がける工房を開いた。十数人の従業員と、テーマパークやテレビコマーシャル、映画向けのキャラクターを制作した。クライアントのニーズに合わせることに忙殺された。
誰もが生まれた時に持っている自由な発想力こそ、未来へのエネルギーにつながる大切なもの。それを失いかけていると思った。「素直に自分を表現したい」。思い浮かんだのは混沌(こんとん)とした現実とは別の世界で生きる「妖精」だった。
2003年に工房を譲り、フリーに。ケヤキ、カツラなど天然木材を使い、丸みのある柔和な表情の妖精を彫り上げていった。木目を生かそうと目や唇の他はなるべく色を塗らない。
羽の付いた妖精がラッパを吹いたり手を振ったりする姿は、見る人をほっとさせてくれる。多摩地域や銀座で個展を開くと、硬い表情で入ってきたサラリーマンまでほおを緩めるという。「自由なファンタジーの世界に浸って、安らかな気持ちになってくれればうれしい」
国営昭和記念公園内の花みどり文化センター(立川市緑町)で31日まで開かれている「アートサラダ2011」で、新作など10点を展示中。無料、無休。問い合わせは同センター(042・526・8787)へ。
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