v10.0
- ID:
- 51100
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0726
- 見出し:
- エネルギー自活時代へ【1】被災地で小型分散の強みを発揮
- 新聞・サイト名:
- 日経BP
- 元URL:
- http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110721/106940/?ST=rebuild
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 避難所で小型分散型の再生可能エネルギーが活躍している。
ペレットストーブ、太陽電池、太陽熱温水器――数時間で設置した。
3月11日、宮城県南三陸町は町の大半が巨大津波に飲み込まれた。人口が約1万7600人の町で死者・行方不明者は1000人を超え、被災直後には、約1万人が避難所での生活を余儀なくされた。
同町で建設資材を製造・販売する高野コンクリートの本社は、海岸から離れた高台にあり、幸いにも津波から免れたという。髙野剛社長は、日頃から災害に備え、毛布100枚や20人が1ヵ月間暮らせる乾パンや、小型自家発電機などを備えていた。
被災直後から工場の一部を開放。周辺地域から、住む家を失った約35人が避難してきた。4月末までには徐々に他の場所に移るなどして解散したものの、「当時は、みんなで協力して炊き出ししたり、仮設の風呂を作ったりして乗り切った」と振り返る。
避難所生活で堪(こた)えたのは寒さだった。東北の3月には、まだ冬将軍が居座る。南三陸にも度々雪が降り、日中でも零下5~7度まで下がる日もあり、小型の灯油ストーブでしのいでいたという。
「体の芯から温まる」
そんな中、NPO(非営利組織)の日本の森バイオマスネットワークから、ペレットストーブを無償で設置するとの申し出があった。髙野社長は、ペレットストーブを使った経験がなかったものの、少しでも暖が増せばとこれを受諾。3月19日に2台のペレットストーブがやってきた。
避難所に設置したさいかい産業製のペレットストーブ。右写真が髙野社長。ペレットストーブはファンを回す電源が必要なため、停電中に自家発電機がない避難所は発電機と一緒に提供した
着火材を入れると間もなく温風が吹き出し、すぐに「温かさが違うな」と感じた。灯油ストーブの出番はなくなり、4月中旬までペレットの火炎が避難所を暖めた。「体の芯から温まるので、外に出ても簡単に冷えない」。髙野氏はペレットストーブに惚れ込み、本社事務所に正式に導入することに決めた。
日本の森バイオマスネットワークは、3月中に岩手県南部から宮城県北部の避難所を中心に43台を取り付けている。同ネットワークにペレットストーブを寄贈したのは、ストーブメーカーのさいかい産業(新潟市西区)、ペレットを提供したのは、栗駒木材(宮城県栗原市)などだ。
宮城県栗原市にある栗駒木材では製材工程から出るカンナくずなどをペレットに成形している
栗駒木材は製材工程で出るカンナくずなどからペレットを製造、さいかい産業などと連携してペレットストーブの普及に努めてきた。日本の森バイオマスネットワーク・副理事長で、栗駒木材の社員でもある大場隆博氏は、「ペレットストーブを知ってもらういいチャンスだ」と判断。同ネットワークの唐澤晋平事務局
長とともに避難所を回った。
「ペレットストーブって何?」。最初はけげんな顔をされるが、温かさを体感するとみな喜んだという。
予想以上に好評で、今度はペレットストーブの手配に苦慮した。「良さを分かってもらえれば…」。さいかい産業の古川正司・取締役開発隊長が、同社の在庫をかき集めるなどして43台をそろえた。
「ペレットストーブは、地元の木材産業を活性化する地産地消のエネルギー。東北の復興に大きく役立つはず」と、古川氏は期待する
..