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- ID:
- 48685
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1115
- 見出し:
- 転機迎える県内の木炭業界 高品質だが収益上がらず /岩手
- 新聞・サイト名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/iwate/news/20101114ddlk03020012000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
-
「年寄りでネット販売できず」
日本一の生産量を誇る県内の木炭業界が転機を迎えつつある。旧来から続く流通方式や、安価な「新炭」の脅威にさらされるなど、収益が上がらなくなった。生産者の減少、高齢化も顕著だ。生産の中心を担う県北部では、関係者が事態の打開に向け、今後の生産方針を協議する検討委員会を設けた
ほか、県木炭協会も、組織改編を機に販売価格調整の先導役を務めたい考えだ。生産者は出荷先の反発も視野に入れつつ、「何とかしてジリ貧状態から脱したい」と切実な声を漏らす。【狩野智彦】
林野庁がまとめた09年全国生産量(白・黒炭)約1万5250トンのうち、県産は約4100トンと3割弱を占める。生産者や同協会、県などは一様に「品質が高い」と胸を張る。だが、生産者の現状は厳しいという。
理由の一つに、生産者が販売価格決定に主導権を得られていないことが挙がる。価格交渉は輸送・出荷を担う「移出業者」と行うが、生産者は運転資金が不足し、早く現金収入を欲している。このため、なかなか交渉で優位に立てないという。小売店と直接取引しないため、形状や販売量など消費者ニーズ
に柔軟に応えられていないこともある。
「備長炭」の商標でブランド力がある関西地方は、本物志向の需要に支えられ地力がある。業界内には最低価格ラインがあり、特に主力の和歌山県産の単価は岩手黒炭の約4倍。同県の生産者は岩手の約1割にあたる20~30人と少ないが、高い品質が維持されているという。
岩手では、価格の最低ラインもなく、県北部のある生産者は「低賃金労働者のように搾取され続けている。年寄りでネット販売など新しいこともできず、現状を脱せない」と嘆く。
厳しい状況にさらに追い打ちをかけるのが、おがくずを固めて作る安価な「おが炭」の台頭だ。単価は国産が県産品の3分の2、外国産は4分の1だ。黒、白炭の利点を兼ね備え、木炭のシェアを奪いつつある。
苦境を打開しようと、県北部の生産者や専門家、自治体などが今年6月、「木炭振興方針検討委」を発足させた。生産、流通など関東、関西地方で市場実態調査を行い、今年度内に今後の岩手の木炭生産の方針や対応を決める。県北広域振興局の玉山俊彦・林業振興課長は「収入低迷など労働条
件が悪い中、生産者の高齢化や後継者不足も深刻だ。安心して品質の良いものを作れるよう一丸となって進めたい」と話す。
県木炭協会も来年度中に公益法人から一般社団法人化し、価格水準の先導役を目指すという。収益事業があまりできない状況から抜け出す。協会の菊池一成・総務管理課長は「岩手木炭の評価は高く需要もある。直接契約や生産者団体による商標登録支援も含め、ハードルを乗り越えていきたい」と
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