v10.0
- ID:
- 48647
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1111
- 見出し:
- トチノキ巨木林伐採問題って
- 新聞・サイト名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/shiga/news/20101110ddlk25070559000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
-
専門家「水源の森破壊」 住民、保全の会設立
なるほドリ 高島市朽木の安曇川源流域でトチノキの巨木伐採が進んでいる問題で、住民たちが保全に向けて会を設立したそうだね?
記者 はい。地元の山林所有者や住民ら24人が「巨木を育(はぐく)む豊かな森と水源の郷(さと)をつくる会」を10月31日に急きょ、立ち上げました。翌日には会員らが山に入り、伐採の可能性がある5本に、所有者名や「保存木」と明示した札を立て、2日には高島市長に協力を求めました。
Q 慌ただしい動きだね。どんな事情があったの?
A 経緯を説明しましょう。銘木となるトチノキが豊富な朽木の山に着目した木材業者が、山林所有者から木を買い始め昨秋、伐採が本格化しました。私有林の商取引でしたが、地元でも問題視されるようになりました。トチノキといえばトチモチが有名なように、古来、救荒植物として残されてきた樹木です。国
内の天然林減少に警鐘が鳴らされる中、今日なお、これだけの巨木が残る朽木で伐採が進むことは水源の森の環境破壊であり、見過ごすことはできない、という訳です。10月の現地調査や視察の過程で、伐採準備の手が加わった巨木が確認され「これ以上切らずに収めたい」と会設立へ動きました。
Q トチノキの巨木林はそれほど貴重なの?
A 現地を視察した国際自然保護連合(IUCN)生態系管理委員会副委員長の河野昭一・京大名誉教授や、「つくる会」会長に選ばれた青木繁・環境省希少野生動植物保存推進員らによると、樹齢数百年と推定される巨木が残るうっそうとした森で、「見事な天然林だ」とうなるほどです。伐採は数十本規模
とみられ、山は簡単に元に戻りません。
Q 巨木ってどれくらい大きいの?
A 10月に確認された県内最大のトチノキは幹回り(樹高1・3メートルの位置で計測)7・2メートル。近くには伐採直後の同8・8メートルのものがあり、幻の県内一と判明しました。跡地は巨大なこずえが消失して広大な空間が出現。枝葉に守られていた林床(土壌など)が雨にたたかれて荒れ、植生を乱し
、生態系に影響を与えると指摘されました。また、払われた大量の枝葉が谷を埋め、無残な姿となっています。
Q 山の持ち主はなぜ、売ったの?
A トチノキが、特に巨木がこれだけ貴重だとは意識してなかったようです。杉やヒノキのようには使われず、「実は採れるが、炭にもまきにもならん木」で、専門家の話に「へー、と驚いた」そうです。背景には、密接だった土地の生活と山林の関係が疎遠になり、跡継ぎもなく、高齢化が進んだことも指摘されてい
ます。とうに離村して現地の森も巨木も見たことがない山主も多かったそうです。「金になるあてもない山」に業者から声がかかり、渡りに船、と売ったようです。
Q 地元の人の意識も変わったんだね。今後どうするの?
A 会は取り組みの柱の一つに「地域の誇りづくり」を掲げています。巨木林を生かした地域づくり・活性化を図り、巨木林を“売り”に人々を呼ぼうという試みです。山主に売却せざるをえない事情があれば、会で買い取れないかも検討するそうです。伐採問題は終わった訳ではありません。木を切らないです
むように、息長く、地域の人たちの理解を得ながら向き合っていくことが求められています。
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