v10.0
- ID:
- 47786
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0921
- 見出し:
- 実りの秋 猛暑後遺症 果実変色…『こんなの初めて』
- 新聞・サイト名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010092002000019.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 9月に入ってもしつこく続いた猛暑は去り、秋の訪れを実感できるようになったが、暑すぎた夏の後遺症が実りの秋に暗い影を落としている。柿やミカンは高温で変色し、各地の産地で出荷量が減少。ベテラン農家は「こんなひどいのは初めて」と嘆く。山ではマツタケが顔を見せず、恵みの海でも異変が起きて
いる。
猛暑の影響で愛知県豊橋市では、収穫を10月に控えた特産の「次郎柿(じろうがき)」の実が高温のため変色するなどの被害が出ている。
今の時期の実は通常なら淡い緑色だが、今年は日にさらされた部分が「日焼け」して黄色に変色。その部分は育ちにくく、変形して出荷できなくなるという。JA豊橋の担当者によると、市内で480の柿農家が生産しているが、全体で前年比約2割の減産になる見込みだ。
農家は7月以降、水を実に直接まき、表面温度を下げるといった対応に追われ続けた。守田貫治さん(79)は「55年間柿をつくってきたが、今年ほど暑さが続いたのは初めて。ここ数日は夜がしのぎやすくなったので、これからの実の太りに期待したい」と話す。岐阜県でも、本巣市の特産品富有柿に日焼け
の被害が出ている。45年間、栽培している加藤泰一さん(66)の畑では、日よけの紙カバーをしているが、すべてにはできず、赤茶色に日焼けした柿が目立つ。加藤さんは「収穫量は前年の6割を下回るかも」と声を落とす。
「南濃みかん」の産地の同県海津市南濃町では、栽培歴50年の宇佐美伝さん(70)は「今年はこの半世紀の中でも指折りの不作」と嘆息。果皮が日焼けして茶色に変色。日照りの後、集中的に雨が降ったため、根が吸い上げた水が急速に果実に運ばれ、果皮が割れる「裂果」も起きている。
長野県が全国一の出荷量を誇るマツタケへの影響も深刻だ。同県林業総合センター(同県塩尻市)によると、秋マツタケの出荷は例年より2週間ほど遅れ気味。市場にはまだ出回っていないという。
マツタケの生育には気温のゆるやかな下降と適度な雨量が必要で、同センターの小坂信行特産部長は「雨がもう少し降ってくれないと。残暑のぶり返しも心配だ」と気をもむ。
影響は海中にも及ぶ。愛知県内有数の養殖ノリの生産地、鬼崎漁協(常滑市)では、種付けした網を海に入れる「張り込み」の遅れを心配する。今年は、平年より水温が2度ほど高い状態が続く。1度下がるのに10日ほどかかり、例年の10月中旬が月末にずれ込む可能性がある。
「収穫が12月初めごろの初市に間に合わないと、食卓に届くのが年明けになってしまうかも。新ノリは年内に届けたいが…」と竹内政蔵組合長(63)。朝晩の冷え込みを待つ日々だ。
..