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- ID:
- 47341
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0821
- 見出し:
- 【人間たんけん】「樹木は宝」見守り50
- 新聞・サイト名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gifu/news/20100821-OYT8T00953.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 元県文化財保護巡視員 早子 博さん(81)
県天然記念物・樹齢推定850年の「大洞の栗の木」を見上げて語りかける早子さん
御嶽山ろくにある下呂市小坂町大洞。樹齢約850年の巨木「大洞の栗の木」(県天然記念物)に手をかざし、慈しむように語りかける。
「久しぶりだね。元気にしとるか」
巨木を見守り続けて50年余。昨年、町内のヒノキや栗など41種、計86本の樹木名や幹回り、所有者などを記録した冊子「保存樹」(A4判)を発刊した。「樹木は地元の宝。次世代への資料という意味でもどうしてもやりたかった仕事でした」と話した。
樹木との関わりは1955年、当時の小坂町立湯屋小学校に赴任した時にさかのぼる。「国土緑化運動」が叫ばれた時代だった。子どもたちに森林の大切さを知ってもらおうと、学校近くにある大洞の栗の木を写真に撮り、教材として使ったことがきっかけだった。
教員を退職した88年、県文化財保護巡視員を委嘱された。仕事の傍ら、森林を巡回するたびに、厳しい風雪に耐えながら力強く生き続ける樹木の生命力に圧倒された。「台風で真っ二つに裂けた梅の木が、見事に再生したこともありました。驚きの連続でした」
70年には、樹木と向かい合うきっかけとなった大洞の栗の木や「坂下の12本ヒノキ」(樹齢約750年)など18件を県に申請し、天然記念物の指定を受けた。歴史的価値のある巨木や無名の大樹を数多く見つけたことも印象深い思い出だ。
特に思い入れが深いのは、大洞の栗の木。鎌倉時代、戦に敗れた落ち武者が植えたと伝えられており、幹回り5・7メートル、樹高約17メートル。幹の中は空洞部分が多いが、樹勢は旺盛で毎年、大きな実をたくさんつける。
巡視員の仕事は77歳だった2005年まで18年間続けた。今も樹木の巡回は欠かさない。四季折々の表情を観察し、周辺環境にも注意する。小坂の樹木にはだれよりも詳しいとの自負もあるが、後継者が少ないのが悩みだ。
「何百年も生き続ける樹木と比べたら、私たち人間はちっぽけな存在。学ぶべきことはたくさんあります」
樹木を守るため、より多くの人たちに興味を持ってもらうことが、一番の願いだという。
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