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ID :  2873
公開日 :  2007年  2月25日
タイトル
[のどもと過ぎれば…
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/housing/amano/TKY200702250093.html
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元urltop:
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写真:
 
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先日、家を建てて十数年建つ建て主とお話ししたところ、この「いい家いい家族」のコラムの話になりました。よく精力的にお書きになっているとご賛辞をいただいたのち、毎回お読みいただいているかと聞け ば、なんと、「あぁ、また“あのこと”をお書きになっていらっしゃる」と安心されると言われました。つまり住まいに対する私の姿勢やそのアイデアが、凝りもせず“また同じこと”をと、そのタイトルだけを見て安心されてい るというのでしょうか? 親子で建てる可愛い家。Nさんの家の地鎮祭 「はぁ“あのこと”?」ちょっとした会話でしたが、なぜか複雑な心境となり、しばらく考え込んでしまったのです。なるほど今まで多くの建て主に会い、日常的にそれぞれの人からご要望を聞き、さらにその土地や周りの環境 を見て家の設計をするのですが、考えてみればこちらの言っていることと、その手法はいつも同じことなのかも知れません。  ただし“あのこと”とは、すでに家を建てて長年住んでいる人から見てのことで、はじめて家を建てる人や私自身、さらに私のスタッフにとっては常に新鮮な“このこと”ばかりで、出会ったばかりの建て主の人柄や、その 家族、さらにはその時の世相でまったく違ったプランが生まれ、新しい家の形が提案されるのです。  確かに家の設計の思想や家族、夫婦に対する思いや姿勢は、私は一貫していてさほど変わっていなく、その姿勢は、出会いの数を増すほどに頑固になっているのかも知れません。もちろん生活スタイルやデザインの 好み、さらにはその外観などは、その時代に会ってファッショナブルに刻々と変化しているのですが、ほとんどの建て主はそのことには興味があっても、家族や夫婦のことにはあまり関心を持たれないのです。果たして 家とはそんな考え方でいいのでしょうか。  家族の暮らしは時代や世相によって変わります。家族自体も、またその住む家も刻一刻と変わっていくのです。その意味でファッショナブルなのですが、そのつど家を変えるわけにはいきません。そのために家はシンプ ルにフレキシブルにつくり、その変化に柔軟に対応するものでなければなりません。このことが“あのこと”なのです。  しかも、ファッショナブルな家は外観のデザインや素敵(すてき)なインテリアだけでは解決しないのです。最近は耐震やシックハウスやメンテナンスなどが重視されるのですが、これも気まぐれに構造技術や健康材料 や性能保証のことばかりを気にしすぎず、本来の家の意味や家族のこと、そして何よりも自分自身のことを忘れてはなりません。とまあ、このようにどうしても同じことの繰り返しになるのです。  しかし、このことは私自身のことでもあり、多くの家づくりのお手伝いで何度も失敗したことでもあり、時がたった今、さらに実感することなのです。最近は特に少子化が進み、子どもの問題や年金問題が急浮上してきまし た。さらに団塊世代が定年を迎え、高齢者の生活に向けた家の耐久性問題なども出てきています。「妻の言うとおりに」と言うわりには奥さんの老後のことがあまり重視されていないのです。これはリフォームでも同じこと が言えるのです。  私が嫌われながらも“うるさく”言って、このことをクリアされて家を建てたり、リフォームされたりした建て主たちは「また“あのこと”を言っている」と、のどもと過ぎれば熱さを忘れたかのように、当然のように住んでい ただいているのなら、コラムなど読んでいただかなくとも私はとてもうれしいのですが……。  そんな中の週末に、とてもほのかな地鎮祭をお参りさせていただいてきました。わずか15坪にも満たない敷地に、親子の2階建て住宅を建てると言うことで、意に感じてお手伝いさせていただいたものです。敷地は商 店街の路地奥の密集地で外壁は防火をまず心がけ、プランは実にシンプルに、かつ将来のあらゆる可能性に備えているのです。しかも構造は林野庁の森林認証材の桧(ヒノキ)などの国産材を柱に耐久性を考えた木造 軸組みです。写真は喜びのNさん親子と施工の皆さん、そしてわがスタッフです。今後この家の施工状況などお知らせしてまいりたいと思います。