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木造建築のネツト記事
ID :  2766
公開日 :  2007年  2月15日
タイトル
[「国風盆栽展」 樹齢300年の松柏も出品
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200702150164.html
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元urltop:
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写真:
 
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盆栽展の最高峰と言われる「第81回国風盆栽展」が16日まで東京・上野の都美術館で開かれている。愛好家が手塩にかけた名木が全国から集まり、今年も8日間で3万人を超す観客が訪れそうだ。年配男性 の趣味といった印象もいまは昔、数年来のブームで女性や外国人の姿も珍しくない。盆栽はなぜ、人を魅了するのか。東西の庭園史にくわしい白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授と会場を歩いた 最高峰の盆栽が集まる国風盆栽展=東京・上野の東京都美術館で 黒松を凝視する白幡洋三郎教授  「風格」漂う木々が、会場で待ちうけていた。能舞台の背景に描かれたような曲線の黒松、落葉した枝をほうきのように広げたカエデ、ちらほらと白い花をつけた野梅には季節感があふれている。  「縮尺がわからなくなりますね。木に大小があっても、少し焦点をぼかして見ると、にわかに巨木が立ち上がる」と白幡さんは目を細めながら、一点一点見つめていく。傍らでは、盆栽に霧を吹きかける係員の姿も。  国風展は1934年に始まった。「国風」とは、国独自の風習を意味する。中国で盆景と呼ばれる盆栽を日本の芸術としてとらえようと、関係者が美術館での展示を望んだ結果という。とはいえ、当初は「美術館に泥がつ いたものを持ち込むとはなにごとか」との反発もあったそうだ。  今年は全国から445点の出品があり、入選作265点を展示している。最近の盆栽ブームは手狭な住宅事情や、年配者や女性の扱いやすさといった理由から樹高20センチ以下程度の小品の人気が高いというが、200 点近くは50センチ以上はありそうな大型盆栽だ。愛好家最高の栄誉と言われる今年の「国風賞」には、大型の黒松など4点が選ばれた。  その黒松の近くには、宮内庁からの特別出品「皇居の盆栽」が置かれていた。こちらも黒松。白幡さんは「どちらも格調があるけど、違いますねえ。皇居のはワイルドな感じで技巧があまり介入していない印象。仕立て方 にもはやりすたりがあるのかな」。  雑誌「盆栽世界」によれば盆栽人口は一説に100万人ともいわれ、国風展に選ばれるような銘木は数百万円を下らない価値があるという。  白幡さんは、最古級の盆栽資料の一つ、鎌倉時代の絵巻「春日権現験記(ごんげんけんき)」が気になっていた。台に載せられた盆栽がある庭が描かれている。自然を模した庭園に、さらに小さな自然のミニチュアを置く のはなぜなのか。美の基準はどこにあるのか。  国風賞の審査基準について、主催する日本盆栽協会の竹山浩理事長は「絵画的な風景も重要ですが、むしろ木そのものを見ます。木ぶり、枝ぶり、鉢合わせのバランスです」と話す。この時期に開催される理由も「落葉 樹は葉や花が落ちたとき、うそがつけない。葉や花の付きようは、あまり関係ありません。そして、最大の評価軸はなんといっても時代の古さです」。  大型作品が多い理由もここにある。名木は小さく維持しようとしても、長い年月で大きくなってしまうからだ。  国風展も、流行の移り変わりを映してはいる。葉や花を楽しむ雑木(ぞうぼく)人気を反映して、国風賞に部門を設けた。10年ほど前からは、中小作品も出品しやすい展示方法を導入している。しかし、やはり王道は常 緑針葉樹を指す「松柏(しょうはく)」。出品作には樹齢300年といった松柏も珍しくない。山に自生して200年、鉢に植えて100年といったものもある。当然、一代で育てられるものではなく、所有者は次々と移り変わって いく。  白幡さんが足を止めた作品にも、一鉢の真柏(しんぱく)(ミヤマビャクシン)があった。板のような白い幹に茶褐色の管状の幹がからみつき、ぐねぐねと微妙な曲線を描く。「天然の前衛だ」とぽつり。白い部分はシャリ( 舎利)と呼ばれ、自然の風雪に耐えて、幹が白骨化したものをいう。  「日本の庭は庭石への思いからできているといっても過言ではありません。石には人間のスケールを超えた途方もない長い時間感覚と経験が詰まっている。シャリも一種、石と同じような感覚なんでしょうね。ほとんど 変わらないなかの微細な変化を楽しむ。自然のもつ奥義、とでもいうべきものでしょうか」  竹山理事長も「不思議なもので、山間をドライブしていると、ふと、名木を思わせるような樹木の姿を見かけることがあるのです」。  見終えた白幡さんは、こう振り返る。  「庭石を持つ日本庭園と松柏に代表される盆栽は作り手の寿命を超えて存在します。人間の尺度を超えた自然を体現している。超越的でおおらかな“力”は、決して暴力的でも強制的でもない。そんな“力”が日本人の 心を強く引きつけるのでしょう」