ID :
1828
公開日 :
2006年
10月12日
タイトル
[高知市筆山に文化の隠れ家 建物老朽化でも大人気
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新聞名
http://www.kochinews.co.jp/0610/061012evening01.htm
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元urltop:
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写真:
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夜。高知市中心部の山にどこからともなく管楽器の和音が鳴り響く…。発信元をたどって山道を上がると、山の中腹に数十台もの車が駐車していて、その奥には裸電球に映し出された古びた建物。中をのぞく
と、ホルンやフルート、木琴などを奏でる人々の姿が見えた――
高知市小石木町の「筆山文化会館・ユースホステル」
昭和38年に高知市筆山ユースホステルとしてオープンし、ピーク時には宿泊客が年間1万人を超えたが、昭和59年には1400人台まで落ち込み、昭和60年、高知市は事業を終了した。市はその後、ここを文化活動
などに利用できる貸し館とし、現在に至っている
鉄筋コンクリート2階建てで延べ床面積は477平方メートル。1階には会議室のほか談話室、陶芸室、2階には和室、また別棟に音楽練習室がある。平日は午後と夜間、休日は午前、午後、夜間に貸している
利用率は驚くほど高い
昨年度、午後5時―9時までの平均利用率は会議室が70%、音楽練習室が90%。月によっては、昼夜問わず100%という部屋も複数ある
高知市内のほかの公共施設の貸し音楽室などと比べてもその差は歴然。昨年度実績で見ると市文化プラザ「かるぽーと」音楽室の平均稼働率は42%、男女共同参画センター「ソーレ」の創作実習室の平均利用率は35
%で、同文化会館の利用率がいかに高いか分かる。なぜこんなに人気があるのか
20年近く毎週金曜と日曜の夜に利用している楽団の団員は「駐車場が無料」「利用料金が安い」「音が自由に出せる」「夜九時まで使用できる」「使い勝手がいい」と同会館を絶賛
平日の昼下がりに彫塑の制作のため利用している女性は「駐車料がいらないのが一番の理由だけど、ここは(彫塑には)十分な広さがあるし、管理人さんに断れば塑像も置かしてもらえる」
ガラス戸一枚隔てて複数の団体が利用する日も多いが、「ジャズの音なんか聞きながら楽しく彫塑していますよ」と苦にする様子もない。狭い施設の中で譲り合って文化活動を楽しんでいる
老朽化が気にならないわけではない。完成から既に43年。ベランダの手すりのコンクリートははがれて、一部は鉄筋がむき出している
しかし改修には制約がある。国から補助金500万円を受け、「耐用年数65年」として建設しているからだ
「それなら…」と、使い勝手をよくするため、利用者たちはいろいろと努力を重ねてきた。利用者協議会を作って音が周囲に漏れないよう防音カーテンを設置した。施設の管理人は周辺を明るくしようと自主的に斜面の
雑木を刈った。ドラムなど大きな楽器の一部を共同購入し、毎回持参しなくていいようにした…
会館の窓を開けると、すがすがしい山の風が吹き込み、虫の音が聞こえる。おのずと気分も開放的になり、奏でたり、創作しようという意欲が高まってくる
「建物はどんなにぼろぼろでも、お金がかからず、親しみやすければいい」と利用者
人が集まる理由は決して施設の立派さにあるのではない、ということを、この会館は教えてくれている。