ID :
14504
公開日 :
2009年 12月23日
タイトル
[ブータンの伝統建築は究極の「エコロジーハウス」
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/091223/sty0912230831001-n1.htm
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写真:
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風を巧みに取り入れ建材も地産地消
世界的なエコブームだが、自然にやさしく経済的な伝統建築がブータンにある。築200年、300年は当たり前。エアコンなどはなく風を巧みに取り入れた「エコロジーハウス」なのだ。ブータンの住宅といっても、日本で
ほとんど知られていない。現地調査をした千葉工業大学建築学科教授で建築家の古市徹雄氏(61)は「そのデザインの美しさとエコ建築は驚きです」と称賛する。
ブータンは中国とインドという大国にはさまれ、面積は九州ほどの広さ。古市氏は昨年10月、日本建築についての講演のためブータンを訪れ、現地の建築のすばらしさを同国建設省に具申したところ、同国との合同調
査を依頼された。
訪れたのは西部の標高が2500メートルにある小さな集落だった。伝統建築は木造3階建てが基本。日干しレンガが積まれた1階は家畜小屋、2階は穀物倉庫、3階段が住居になっていた。各階は急な階段が架けられ
ているが、「80歳のおじいさんも急な階段を元気よく上り下りしています」と古市氏。
屋根の庇(ひさし)も大きくゆったりとしており、雨も吹き込まないから木が腐りにくい。傷んできたら、壊れた部分をリフォームするため、200年から300年は平気で使っているという。
家は風の流れを読んで配置され、「夏は川からの風が入ってくる」ように、窓も川に向けて付けられている。標高が2500メートルと高いため光は強烈。日本のように太陽を取り込む南向きの窓はなく、むしろ太陽を遮っ
ている。 ブータンの緯度は沖縄とほぼ同じだが、標高が高いため冬には雪が降る。「気候も東京と変わりませんが、風が通り抜けるため、クーラーは不要。自然を知り尽くしていて、どうつくれば快適なのか、何代にも
わたり受け継がれてきた。デザインもすごくいいし、われわれ建築家はとてもかなわない」。しかし、現地の人に高度な技術の自覚はなく、首都のティンプーなどでは鉄骨造の低層建築も現れてきた。
ブータンは国土の大半が山地。そのため、建物の材料となる木材はすべて現地で調達され、100%地産地消というわけだ。柱やはりは周囲の山でとれた松。日干しレンガも地元で作られる。「日本は木材をカナダ、ベ
ニヤを東南アジアなどから手間をかけて運んでいる。本来、建築は風土にあったものがいい。そうするのがエコロジーでありエコノミーです」
人口約77万人(2007年)のアジアでも目立たない小国にエコ建築のヒントがあるようだ。